開拓督務補佐役、島義勇とシュマリ
ネタバレします。
第三章「刺青」
明治二年(1869年)12月札幌でシュマリは暴れ投獄される。
と言っても獄中にいたのはふたりだけ。
それは極寒の夜を迎えれば囚人たちは次々と死んでしまうからだった。
シュマリの目の前で一人が凍え死ぬ。シュマリは牢内で火を起こして火事を起こし今度は外で杭に縛られるがそれを率い抜いてさらに暴れる。
シュマリは北海道開拓督務補佐役で判官様と呼ばれる島義勇に呼ばれる。
島義勇は五稜郭の軍用金だった金を探していた。五稜郭が落ちる前に榎本武揚が密かに持ち出しどこかへ莫大な金を隠させた。そのありかを部下のひとりの身体に刺青でしるしたのだ。しかしその男は戦が終わると行方知れずとなったのである。莫大な金というのはおよそ三万両。
島義勇はシュマリにその男を見つけ出せというのである。
シュマリは佐賀藩一のピストルの使い手関口金吾をつけられ捜索に出た。
シュマリが向かったのはアイヌの集落。そして目算通りにその男はそこで鏡を買い滞在しているという。
鏡を使って自分の背中の刺青を書き記していたのだ。
シュマリたちはそのままその男の刺青を見て山の中の温泉へ向かう。
榎本武揚は金を砕き砂金にして硫黄泉からの渓流に流していたのである。
たちまち目の色を変える関口金吾とその手下たちをシュマリは一刀両断にした。
そして少しの砂金をすくうとそれを妙のもとに持っていったのである。
第四章「雪解け」
シュマリが日用品欲しさに止めた商人馬車に女郎を集めて乗せた馬車があった。
その中の一人「お軽」にからまれていく。このお軽が易者のようなことをいうのがインカラマッを思い起こさせる。
ちょっと面白いエピソードだったのだがこの短編中でお軽は死んでしまう。
昔はこういう一話きりで女が死ぬ話が多いんだよなあと思ってしまう。
第五章「太財一族」
シュマリは水はけのいい丘を一目見て気に入りそこに自分の居場所を作ろうとするがその丘は太財一家の土地だという。
太財一家は貧相だが強欲な父親が取りしきおっており、傲慢で馬鹿力だけの長男弥十と奇妙にシュマリを気に入っている狡猾な次男弥七と一人娘の峯がいた。峯はシュマリが今も惚れ込んでいる元妻の妙にそっくりであった。
シュマリは弥七を交渉役として砂金でその場所を買う。
だがその場所はネズミの大軍が繰り返し襲ってくる場所だったのだ。
シュマリが幾度作物を育ててもすべてネズミに食い荒らされてしまう。そこで考えたのがキツネを繁殖させネズミの天敵とすることだった。最初は逆にネズミに食われてしまったがいつかキツネがネズミを根絶やしにしてくれる、とシュマリはその日を待ち望む。
第六章「瀕死の村」
シュマリは再び砂金を取りに行く。
太財弥十がシュマリを追跡するが途中ではぐれる。
シュマリは帰途コロリが流行って死滅寸前の村に出くわす。
出てきた男は元会津藩の藩士で一族とともに開拓民として移り住んだのだがコロリが流行ってこの状態だという。
シュマリの馬を借り札幌から医者をつれてこようとして太財弥十に殺されてしまう。
シュマリは手に入れた油を犠牲にして弥十に火をつける。
(が、後にけろりと出てくるんだけどね)
シュマリは滅亡した村を後にして妙の家に行き砂金を置いていく。
第七章「ポン・ション」
シュマリは物凄い子どもの泣き声で起こされる。
家の外にいたのは小さな男の子だった。ポン・ション(小さなウンコ)という名のるその子はシュマリの隙をついて家に居座った。
シュマリのとっておきのドブロクを好んで飲んでしまい「ニテ」と笑う。
陰惨なこの物語の小さな明かりである。
何事にも動じないシュマリがポンションには振り回されていく。
ここで太財弥七が身の上話をする。
彼らもまた会津藩士で脱藩してアメリカへ集団移民するはずだったのがどういうわけか北海道に彷徨いこんでしまったというのである。
そして太財一家の目論見は北海道石狩川の川べりでとれた上質の石炭を掘って本土へ送りこの事業で北海道全土を制覇するということだった。
その資金として太財はシュマリが持っていると思われる埋蔵金を狙っているのである。
弥七はオヤジたちとは違いシュマリと手を組みたいと願っていた。
他の太財一家はシュマリを屯所へ訴え捕らえさせようとしたが弥七はシュマリを逃がし再び仲間にならないかと誘う。がシュマリは頑固に断り続けた。
第八章「阿修羅のうた」
1874年。ポン・ションが少し大きくなっている。
シュマリは馬の牧場を作ろうと考えていたが手こずっていた。
特に「阿修羅」と名付けた馬は気が荒く言うことを聞かない。
しかしなぜかポン・ションは熊を馴らしていただけあって馬をしつけるのもお手のものであった。
阿修羅と朝風という牝馬との間に仔馬が生まれる。
しかし厳冬の中、阿修羅はシュマリから刀傷を受けたまま朝風ととともに去っていく。
なんだか心に残る話である。