ガエル記

散策

『殷周伝説』太公望伝奇 その7 横山光輝

これは哪吒。やはり哪吒はかっこいい。

戦いの申し子。中国ものでは珍しい少年神。

まったく物怖じしない我が儘者であるのも少年らしい特色かな。

 

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

うーむ。朝歌にいる者たちは紂王の悪政を肌身に感じているが遠くなればなるほどそれは噂でしかなく忠義の心を持っていれば必ず届くはずという思い込みが強くなる。

張鳳もまた黄飛虎が堕落して謀叛を起こしたと思い込んでいた。

黄飛虎はなんとかその場をしのいだが張鳳は蕭銀を呼んで夜襲をかけよと命じる。

が、黄飛虎に恩のある蕭銀は「自分が潼関に入ったすきに突入してください」と呼びかける。

蕭銀は張鳳を討ちとって黄飛虎を逃したのだった。

 

が、次にまみえた臨潼関の司令官陳桐によって黄飛虎は倒されてしまう。陳桐は毒を含んだ吹き矢を用いて黄飛虎だけでなく他の二将も倒したのだ。

吹き矢というものを誰も知らず突然倒れた三将の手当てすら何もできないでいた。

この様子は青峯山の清虚道徳真君に報告された。そしてそこでは黄飛虎の息子・黄天化が修行をしていたのだ。

師匠道徳真君は黄天化に父の存在を初めて知らせその父・黄飛虎が今毒針で死にかけているのを助けるのだと毒消しの薬草を渡した。

十三年間修行をつんだ黄天化は宙を飛ぶような速さで山を駆け下り父の元へと走った。

 

黄天化!フジリュー封神演義』でも特に好きなキャラでした。本作でもカッコいい若者として登場。

黄飛虎・天下父子、かっこいいねえ。

こうして黄天化は父を助け弟たちに声をかけて師匠のいる修行場・青峯山に帰っていった。

 

次の穿雲関・陳梧は黄飛虎を懐柔する方法で出迎えた。

宴会でもてなし寝静まった頃合いで黄飛虎軍を焼き殺すつもりでいたが黄飛虎自身がこれに気づき皆を起こして屋敷を出た。

そこへやってきた陳梧を討ちとり黄飛虎軍は先へ進む。

 

次の界牌関の司令官は黄飛虎の父・黄滾だった。容易く通してもらえると思っていたが父・黄滾は「これは息子・黄飛虎の反逆だ」として三千の兵で布陣して捕縛する用意をしていた。

黄飛虎の父・黄滾はいくら説得しても「不忠者め」と理解しない。

黄飛虎の側近たちが「この頑固爺め」と心中罵りながらしかし黄飛虎の父を殺めるわけにもいかず騙していくのが面白い。

「死んでお詫びする」と自害しそうになるのを止めねばならずほんとに手の焼ける爺であるw

あははははは。

 

しかし黄明のたくらみで(この名前ほんとう?)黄滾も息子に従わざるを得なくなり共に西岐へ向かうこととなった。

そして最後の殷の関である汜水関に到達する。

韓栄司令官はここを通してはならぬと余化に戦いを命じた。

 

黄飛虎は一騎打ちを挑む。槍の腕は圧倒的に黄飛虎が上だったが余化は蓬莱山の一気仙人より授かった戮魂幡で黄飛虎をからめとってしまう。

それは髪の毛を編んで作った暗器であった。

 

青峯山の道徳真君と黄天化は疾風という男からこの報を受ける。黄天化はすぐにも助けに行きたいと願ったが道徳真君はこの技はお前では防げない、と言って崑崙山の太乙真人に頼むことになった。疾風はすぐさま崑崙山に走った。

 

崑崙山の太乙真人は「承知した」と答えた。

そして哪吒を呼び汜水関へ行き捕らえられた黄一族を助け無事汜水関を通過させよと命じた。

そして無駄な殺生をしないことと仕事が終わればすぐ帰ってくるのだと伝えたのだった。

哪吒は武器庫から青い青銅棒と如意珠と乾坤圏を選んだ。

哪吒は修行の技が使えるとあって胸をわくわくさせて崑崙山を駆け下りた。

 

登場しました!哪吒!

封神演義』で最も好きだった。ベタですがw

宝貝もしっかり選んでいるねえ。

 

余化は捕らえた黄一族を朝歌へ護送するよう命じられ向かっているところだった。

哪吒は平地では四方に逃げられる恐れがあると思案して狭い山道で待つことにした。

 

哪吒に出会った余化はその不遜な態度に驚きながらも懲らしめようとするが槍のあまりの鋭さに歯が立たずさっそく逃げて戮魂幡を使おうとするが哪吒はあっという間に風上へと移動する。

「おじさんは逃げるふりをしていつも風上に立ってたんだね。それは戮魂幡だろう。風上に立って風の力を利用しながら細かく編んだ髪の毛を流すんだろう。でも今ここでそれを使ったら自分の体に巻き付いてしまうね」

そして哪吒は「おじさん。俺が風下に回ってあげようか」と言って自ら風下へ回り「この風だったら威力を増すだろうね」というのだった。

自分から不利な立場に立つ哪吒に余化は恐怖した。

 

が、なおもからかう哪吒に向かい余化は戮魂幡を使う。髪の毛が届く前に哪吒はすばやく如意珠を放った。その玉は余化の体にめり込み骨を砕いた。その瞬間に哪吒の体は空中高く舞い余化の頭を青銅棒で打ち砕いたのだ。

(この容赦のなさは横山テイスト)

哪吒は続く兵士たちを乾坤圏で次々と薙ぎ払い如意珠を射ち込んだ。

余化軍は恐れをなして逃走した。

 

ひとりで余化はじめ軍隊を打ちのめした哪吒は「おじさんたち、助けに来たよ」と護送車の檻を叩き壊した。

黄滾はじめ黄一族は哪吒に礼を述べた。哪吒は「お師匠の命令だから礼はいらないよ」と言って今度は放り出されたという家来たちを探しに駆け出した。

 

家来たちが戻ったのを見て哪吒は「それじゃあ汜水関に攻め込もう」と言い出す。

驚く黄飛虎に哪吒は屈託もなく「俺が城壁を登って城に入るよ」と言い残し戮魂幡の毛を使って城壁をするすると登り始めた。無論城兵から攻撃されそうになれば如意珠を打ちこむ。城兵は戮魂幡を斬ろうとするが斬れなかった。

哪吒はあっという間に城壁を登り防ごうとする兵たちをまたも乾坤圏や珠で倒していく「邪魔をしなければ殺さないよ」

そして城門を開けさせ「おじさんたち、門を開けたぜ」と呼んだ。

 

司令官韓栄は部下たちが言う「子供にやられました」という言い訳を信じていなかったが敵対してやっと本当だとわかり逃げ出した。哪吒は後は追わなかった。

黄飛虎は奪われた持ち物を取り戻し哪吒に再び礼を言い「一緒に西岐に行かぬか」と誘うが「お師匠様に叱られる。お師匠様はおっかないから」と言って去っていった。

 

これほど強いのにお師匠様はおっかないというのが子供らしくてかわいいね。

 

こうして黄飛虎一行は西岐へと入っていった。