ガエル記

散策

『殷周伝説』太公望伝奇 その8 横山光輝

表紙の紂王に描かれているのが武成王黄飛虎ですがかっこいいのなんのって。

武将には惚れ惚れしますなあ。

 

 


ネタバレしますのでご注意を。

 

 

西岐に入国した黄飛虎一行。太公望は武成王の突然の来訪に驚き西岐に帰順したいという願い出にますます驚く。

黄飛虎は紂王が国政を忘れた事態だけでなく妻を死に追いやり諫めた妹を摘星楼から投げ落として殺したことを話す。

太公望は驚きそして黄飛虎が西岐を選んでくれたことは天意でございましょうと王の謁見を取り計らった。武王も黄飛虎の帰順を喜びこれまでと同じく一文字だけを変えて開国武成王に封じた。

 

一方東海を鎮圧した聞仲太師は朝歌に戻ってきた。

妲己や佞臣がいまだ存在すること、そして逆に黄飛虎の姿が見えないことに気づく。

紂王は自分の罪を隠して一部始終を話したが聞仲はすべては紂王が犯した科だと見破っていた。それでも忠臣であるべきの黄飛虎の罪は死に価すると聞仲は黄飛虎が向かった西岐討伐を晁田と晁雷に命じたのだった。

 

晁田晁雷兄弟は費仲の第一の家来と言われている。太公望は彼らを従えられれば大きな成果になると考えていた。

兄弟は黄飛虎の説得で帰順する決意をするが問題は朝歌に家族がいることであった。

これも太公望の知恵で救い出すことに成功する。

しかし騙されたと知った聞仲は怒るであろうと考えた太公望は西岐城の守りを固めていった。

 

聞仲太師はやはり太公望の計略に気づき急ぎ西岐を討伐せねばならないと考え二十万の精鋭を四将軍に与え差し向けた。

 

一方この報を知った崑崙山の哪吒、五龍山の金吒、九官山の木吒そして青峯さんの黄天化も西岐へと走った。

 

彼らの到着を知って武吉は師匠である太公望に問う。

「あの少年たちはいずれ不死身になるのですか」「不死身?」「だって仙人になれば不老不死になるのでしょう」

太公望は武吉の考えは間違いだと諭す。真人(仙人)というのは悟りを開いた人であって不老不死という意味ではない。形のあるものは必ず滅す。お日様でもな。

武吉はお日様もいつか滅びると知って驚く。ではなぜ仙人修行をするのですか、不思議な術を使うのですか。

確かに厳しい修行で高い能力を身に着け森羅万象を学ぼうともする。

そんなことを学んでどうするのですか。

人々の役に立つではないか。

武吉は少年たちの活躍が楽しみですねと言い。太公望も「うむ。役に立ってくれるだろう」と頷いた。

武吉さんの純真さに感心します。

 

さて二十万の殷軍を率いた四将は太公望率いる金吒、武吉、哪吒、木吒にあっという間に討ちとられてしまう。

第二次討伐隊の惨敗を聞いた聞仲太師は驚く。しかも西岐軍の兵力は五万ほどだったのだが変な小僧にやられたと聞き心穏やかではいられなかった。

 

聞仲太師は第三次討伐隊として魯雄将軍に費仲・尤渾そして十万の兵を差し向けた。

季節は秋だったが残暑が厳しく朝歌から西岐までの長い旅路を殷軍は猛暑と戦いながら進んだのだ。

あまりの暑さに殷軍は岐山のふもとの風通しのよい場所に布陣した。

太公望は南宮适将軍と武吉に対陣を命じたがその時に「寒さの備えを忘れるな」と忠告した。

残暑は厳しくふたりは太公望の忠告がおかしいのではと思いながらも守っていた。さらに太公望は使者を出してふたりに岐山の中腹に陣を移動せよと命じてきた。暑さの中軍は汗を流して移動するしかない。

しかも太公望はふたりが持って行った冬着が少ないと心配して自ら冬着の追加を持参したのだ。暑さの中で武吉は冬着を配ってまわった。

それだけでなく太公望は敵からも見える場所に祭壇を造らせ何日かにわたって祈祷をあげた。

三日目に涼しい風が吹き始め翌日は急に冷え込んできた。

太公望は今夜は冬着を着て寝るように伝えよという。

「今夜あたりから雪になる」

武吉はお師匠様の言葉を疑いながらも「お師匠様は嘘は言わねえ」と信じていた。

武吉は気になって眠れず夜中に外へ出るとほんとうに雪が降ってきた。

雪は一昼夜降り続いた。雪は膝に達するまでになっていた。岐山の中腹でこれなら麓の殷軍はもっと深い雪の中にいるだろうと思われた。

 

果たして、太公望の命令で南宮适将軍が偵察に赴くと殷の兵士たちは幕舎の中で凍死していたのだ。

兵士たちだけではなく費仲・尤渾までもが凍死していた。生木を燃やそうとしたのが見てとれた。

太公望は祭祀を行うために武王を呼び寄せた。

山に感謝し費仲尤渾の首を生贄として天に誓うのだ。仁義道徳をもって国を治めると。

そして武王が殷の悪大臣を生贄にして捧げたことが天下に知れ渡れば諸侯は周の力に一目置くことになる。

太公望周王朝を興すため次々と布石を打ち始めたのである。

 

凍死を逃れた魯雄将軍はわずかの家来と汜水関にたどり着き韓栄司令官に事の次第を報告したが力尽きてしまった。

 

これらの報を聞いた妲己は聞仲太師に「人選を誤りましたね」と言い放つ。

妲己を憎悪する聞仲太師だがまずは西岐をどうにかせねばならないと考えた。

自ら出陣するのははばかられる今聞仲は欲深く評判も悪いと渋りながらも魔家四将に頼むことにした。

佳夢関の魔家四将は不思議な妖術を使うというので有名であった。

長男魔礼青は長い槍と剣を用い、次男魔礼紅は混元傘という傘を用い、三男魔礼海は琵琶を用い、四男魔礼寿は虎を手足のように使うという。

 

魔家四将が西岐に入り戦闘が始まった。

南宮适と武吉が相手にした魔礼青が剣を振るいキラキラ光ったかと思うと小石が小さな殷の兵士たちの姿になって襲ってきた。武吉は殺気を感じたと同時に肩を斬られ倒れてしまう。南宮适は武吉を救って馬に乗せ逃げおおせた。

 

木吒と哪吒は魔礼紅に挑んだ。魔礼紅の持つ混元傘は盾となって二人の攻撃を阻止しぐるぐると回りだすと小さな布切れが飛び出し蝶に変わった。その蝶が舞うと西岐兵がバタバタと倒れていく。木吒哪吒も危険を感じて逃げたがめまいを感じ慌てて木吒の山の薬を飲んだ。

 

黄天化は魔礼海の相手となった。黄天化は父・黄飛虎が魔家四将を怖れたと聞いて父の名誉のためにもと必死に戦った。

だが魔礼海が琵琶を取り出し音を響かせると黄天化は頭が割れそうに痛くなった。

たまらず逃げ出すと頭痛は治まったが他の西岐兵たちが苦しみその隙に斬り殺されてしまうのだ。

 

金吒は魔礼寿と戦った。金吒の蛇鞭は蛇のように身をくねらせながら魔礼寿の喉を狙っていた。

が魔礼寿が虎を描いた旗の前で立ち止まるとたちまち無数の虎が飛び出してきて金吒と周囲の兵に襲い掛かった。

金吒もなすすべなく逃げるしかない。

 

太公望はやむなく退却を命じた。

完膚なきまでの大敗だった。

死者は一万を越え、負傷者は二万五千、失った将九人のうち六人は武王の弟だった。

太公望は黄飛虎が恐れる理由を知ったのだ。

そこに金吒が「木吒と哪吒が戻ってきていないので今夜探しに行きたい」と申し出太公望はこれを許した。

 

太公望は戦嫌いの武吉が傷を負ったことにも心を痛めた。しかし武吉は「お師匠様のためなら命は惜しくない」と言ってくれた。

 

金吒は夜中戦場で木吒と哪吒を探した。修行した金吒は暗闇の中でも見えるのだ。

やがて二人を見つけ声をかけるとふたりとも気づいて目を覚ます。

金吒たちは倒れている西岐兵の顔に斑点が出ているのを見て「太公望に見てもらおう」とひとりを持ち帰った。

良い絵だなあ。

見惚れてしまう。

 

そして金吒がとても良いw

この蛇鞭がかわいいし。

半開きの目がキュート。まさか金吒がこんなにチャーミングだとは。思いもよりませんでした。