何も知らず読了。
なんという面白さ。驚きました。参りました。凄い。
タイトルの下に「横山光輝時代傑作選」と書かれているので短編集かと思っていました。そのくらい何も知らなかったのですが。
ebookでひとつだけのレビューがついていて悪評になっていますがお気になさらず。これは横山光輝の要素つまった傑作です。(って書かれているけどね、題目に)
ネタバレしますのでご注意を。
始まり、真田幸村が登場する。『伊賀の影丸』など数々の忍者ものを描いてきた横山氏の実績がここで生きる。
誰もが「お得意の忍者ものの系譜なのだな」と信じて疑わない。というか私が疑わなかったw
しかも地道な歴史ものの雰囲気だったのでこれは特に大好きだ、と読み進んでいった。
絵柄も70年代後半にさしかかったばかり『マーズ』と同時期の若々しい魅力がある頃だ。
とはいえ話は奇妙なのだ。
冒頭に戻るがまず猿飛佐助を見た男が驚く。彼は大坂夏の陣で真田幸村とともに討死しているはずなのだ。
佐助が向かった先に幸村が居り佐助の報告を受ける。ふたりは豊臣家再興を謀っているのだが残党狩りの手がいつふたりに及ぶかもわからない危険が迫っていた。
幸村は佐助に「魔界衆の手掛かりはつかんだか」と聞く。「かいもく」というのがその答えだった。
魔界衆とは飛騨連邦に居住する。その恐ろしきことまさに魔界より生れし一族とおぼゆ。年老いたるは百才を越し、彼らがあがめる神体は天下を制覇するもいとやすしという。
一方天海という名の老僧が徳川家康に会い「真田幸村が生きている気配がございまする」と告げていた。
(うう、家康がカッコ悪いよお)
家康にとって真田幸村ほど恐ろしい名前はなかった。
幸村に苦しめられ続けた家康は天海に幸村を見つけその首をはねろ、と命じた。天海はすぐさま伊賀甲賀者を総動員し真田一族を探し出せと忍びの者を差し向けたのだ。
ここまででも単に死んでいたはずの幸村を生かしてもう一度活躍させる物語としか思っていない。
佐助に加えもう一人ここで霧隠才蔵も幸村を守っている。(司馬遼太郎『風神の門』からの大ファンっす)才蔵はやはり男前だな。
才蔵・佐助は幸村を守りながら豊臣家再興の道を探っているのだ。
こうして謎の怪僧・天海僧正と真田幸村そして幻の魔界衆の物語が始まる。
佐助・才蔵を従えた幸村は飛騨山脈を巡り魔界衆を探し出し豊臣家復興の手助けを頼むつもりであった。
しかし大山脈を前にしてそれは気の遠くなる話だった。
が、川岸で一休みしていた三人の前に一人の赤子が川を流されてきたのだ。幸村は才蔵に赤子を救出させ危険を承知で火を焚き温めた。
そして案の定その火を追手が見つけ三人を捕えようとしたのだがここから話が急変していく。
痺れ薬をまかれ倒れた幸村一行を救ったのは身動きすらできないその赤子だった。
その赤子こそ魔界衆のひとりだったのだ。
赤子は襲ってきた敵(天海の手先)に暗示をかけ仲間同士で殺し合いをさせ最後の一人も死に追い込む。
(はっ。これは以前読んだ「登山中の兄弟が立ち寄った家で出会う幼児の話」『怪物(モンスター)」と同じではないか。何故登山まで一緒なんだろう)
やがて目が覚めた幸村たちは死体となった追っ手たちを見て意味不明の事態に陥る。
その後にも狼に襲われまたも赤子の能力で助かるがまだ三人は理解していない。
がさすがに幸村はその謎を解き始めていた。
場面が移り魔界衆が住む村に幸村一行が近づいてきたことが知らされる。
魔界衆はよそ者を近づけたくはない、が一族の子どもを助けて連れてきているのを知ってはそうもいかん、と長らしき老人が皆に告げる。
幸村の持つ本に魔界衆の村の周囲は毒ガスに包まれていると記録されていた。幸村は小鳥を使って毒ガスの有無を確かめながら進む。
表紙の少年である。
いったん毒ガスで引いた三人だが幸村は一計を案じ再び進み始めた。
が今度は火の海が行く手を阻む。
幸村は才蔵に「火の中を駆け抜けろ」と命じる。
佐助が「才蔵がかわいそうです」というのが萌える。
が幸村の命令通り駆け抜けた才蔵は燃え上がった。
続く。
うう、ジャンル決めたらネタバレになるなこれ。苦悩。