ガエル記

散策

『武田信玄』横山光輝/原作:新田次郎 その1

気になる人物なのに今まで特にその人生を知らずにきた武田信玄横山光輝氏マンガで読めるなら一挙両得と読んでみました。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

先日読んだ山本勘助が勿論出てくる。が、主人公だった時はすごい男前だったのがここでは不細工男として描かれる。そもそも勘助は不器量だったと記されているのでこちらが本来なのだろう。しかも(今のところ)両目がある。そして韓信だ。

項羽と劉邦』で韓信のキャラデザインをすごく褒めたのだけどもともと山本勘助だったのか。(さらに元ネタがあるのか)

 

横山氏は家康・信長・秀吉と描かれていてさらに伊達政宗そして武田信玄なのだけど上杉謙信はないようだ。(本作に登場はするが)このあたりにも横山氏の好みを感じさせる。

 

 

まだ読み進めて半分ほどだが信玄の特色として非常に女性関係が描かれる。その中で際立つのが三条の方だろう。

しかし本作では三条の方は気位ばかりが高い見目の良くない女性で信玄とは折り合いが悪くことごとく対立し信玄は彼女を嫌って侍女のおここを愛するようになる。

この関係がまったく同じではないが青池保子『アルカサル』のドン・ペドロを思い出させる。ドン・ペドロもまた政略結婚でフランスから正妻を迎えるのだが気位の高い冷たい女性でまったくとりつくしまもないのだ。

しかしやはり青池氏は女性だからでもあるのだろう、彼女にも恋の物語を与えてくれる。いくら気位が高くても恋心は芽生えるのだ。

とはいえ史実では三条の方は美女であったとも記されていて信玄との仲もよくその証拠に五人も子ができている。

物語の解釈はなかなか難しいものだ。

 

そして最も面白いと思ったのは信玄の住まう場所が実りの少ない「貧しい土地」であるところだろう。

冒頭で信玄は「この土地だけで養える兵はせいぜい六千、天下などとても狙えぬ」と思うところから始まる。

その上で信玄は天下を目指して知恵を絞っていくのだ。山から金を生み出し鉄砲を集め忍者を使うのはそうした貧しい土地だからこその知恵なのだろう。

家康・信長とはまったく違う物語が面白い。