ついつい一気に読んでしまいました。
マンガで最初勢いよく面白いのにだんだんつまらなくなっていくのはよくあることですが本作は逆で進むごとに面白くなっていきます。
原作ありだからこそかもしれませんが横山先生も後に行くほど面白いと思われての漫画化ではないでしょうか。
ネタバレしますのでご注意を。
というか若い頃の武田晴信より信玄になってからが面白いのでしょうか。
若い頃は女性関係のごたごたが多いのですが横山氏の魅力はどうしてもそこにはないので仕方ない。
とはいえ横山作品としては珍しいほど最後まで女性が活躍するのも面白い。というか日本戦国時代の物語でここまで女性が第一線で活躍するのは稀有ではないでしょうか。
十巻でのあかね・里美・恵理の三人の側室が歌い舞う姿で信玄に作戦のひらめきを与える場面は楽しいといってもいいものです。
特にあかねは信玄の側室ながら危険な場所へも信玄の名代・使者として赴くのだ。最初はそれを信玄の愛情の無さと受け取り悲しんだあかねだが信玄の信頼だと感じてからは堂々と行動していくのが頼もしい。馬術に長けているというのも甲斐の特色なのだと知りました。
織田信長が比叡山の僧を虐殺し焼き払った際、信玄は真田昌幸に名僧だけを救い出させるが比叡山の僧侶のあまりの堕落ぶりに真田真幸が「だんだんこちらが信長の気持ちになって来たわ」とつぶやくのに吹き出しました。本作を読んでいる分には私も織田信長に賛成です。
真田真幸、本作中で一番のイイ男ですな。
やはり横山氏は堅物が好きなんだなあ。
さて『武田信玄』見事なまでにさっぱりと信玄が死んでしまうところで終わります。
その後はもう描かれない。
ここにも横山光輝の好悪が見て取れる。描きたいものだけを描いている。
だけどその描きたいものを描くためなら大変な努力も厭わない。凄まじい気力だと思う。