ネタバレしますのでご注意を。
とはいえ物語はほぼ横山氏の創作のようで思う存分氏が望む男性像を描いていると思える。
70年代の作品、横山氏の40代の筆によるものなので勢いと色気を感じさせる。
とにかく主人公山本勘助がかっこよく描かれている。横山氏の特色はこの美形主人公には女性を関わらせたくないところにあるのだがその分相棒の源蔵を女性担当として登場させている。
源蔵はかなり小柄な男として表現されている。「マンガ」なのでデフォルメとしてとらえられるがそのままで見てしまえば小人症とも思えてしまう。そう思ってしまうとどうしても思い起こしてしまうのが『ゲームオブスローンズ』のティリオンだ。あの物語でも主人公はジョン・スノウでありながら影の主人公としてティリオンの活躍に惹きつけられてしまうのだが本作でも勘助と源蔵が同じような立ち位置で読者を魅了する。ティリオンが小人症ながら女性にモテモテというのもそっくりなので不思議だった。
まさか『ゲームオブスローンズ』が本作の影響を受けているわけもないが優れた作品惹きつけられる物語というのはそうしたものなのではないだろうか。
物語は勘助と源蔵が出会うところから始まり紆余曲折を経て勘助が武田晴信(後の信玄)に仕官してさらにその軍師としての才能を認められていくまでを描き源蔵が死ぬとともにこの物語も終わる。
いわば源蔵は勘助のために命を懸け勘助だけが生き残るのだけど作品がそこでぶっつりと終了することからも横山氏の目的はこのふたりの男の関係を描きたかっただけなのだということがわかる。
SF作品『地球ナンバーV7』のディックとブレランドを思わせる。体格の対比も似ているのも面白い。
本作ではそのふたりの仲を飛び加藤という妖しげな術使いの男が邪魔をする。こいつがいなければと本気で悔しくなる。
ところで横山光輝の描く男性の顔は何とも言えない魅力がある。
山本勘助なのだけど、この目この体躯の太さ、色っぽいのだ。この感じ、なかなかない。