読了しました。
ネタバレしますのでご注意を。
ふむふむ。横山光輝という方はほんと「かっこいい男」が大好きでかっこよければ物凄い力量で丹念に描いていくがかっこ悪いと思うと一ページも描く気がないのだろう。
その潔さに感心する。
秀吉というか藤吉郎の名前で織田信長に仕えている頃の藤吉郎はおおいに魅力があるけど(将来天下を取るという予感を含めて)後になっていくほどその爆発的な魅力が薄れてしまう。
本作は信長とのつながりが感じられるまでを描かれているように思える。
心に残ったエピソードとしては最初の頃の荒んだ社会。百年にわたって続く戦国の世において人々の心も荒み切っている。
馬を縛り付け生きたまま焼き殺してそれを食う流民たちの話にそれが凝縮されているように思える。そんな中でも日吉(秀吉)は焼かれた馬に憐みを感じ家族にその肉を持って行ってあげたいと思うのだ。この優しさは晩年の秀吉には失われてしまう。
日吉は冴えた頭脳を持つがその頭の良さを両親は怖れる。それを感じた日吉が自ら家を飛び出しその知恵だけで生きぬいていく様子はやはり目が離せない。
蜂須賀小六に出会いその蜂須賀小六も手玉にとっていくのも愉快である。
ここで武芸を身に着けた日吉はここで16歳となり元服して木下藤吉郎と名乗りを上げる。
小六の仲間にすっかり馴染んだ藤吉郎は次のステップへとばかり飛び出して針売りとなって諸国を歩き始める。
ここで6年の歳月が過ぎる。
そして『徳川家康』でも読んだ藤吉郎と信長の出会いとなる。
その後寧々に出会い徹底的にやりこめられる。この時寧々13歳という22歳の藤吉郎を論破してしまう寧々。なかなか愉快だ。
たしかに藤吉郎と言えば信長がはくわらじを温めたことが有名なのはこの頃の藤吉郎に面白みが詰まっているからかもしれない。
信長に仕えて出世していく藤吉郎の話はとんでもなく面白い。
信長の死後の秀吉、この作品に描かれたまでの秀吉、柴田勝家を滅ぼしたまでで秀吉の面白さは終わったのだろう。
横山光輝氏の選択に賛成である。