ガエル記

散策

『織田信長』横山光輝/原作:山岡荘八

横山光輝戦国原作ものは一度味わったらやめられない。永久に続けてほしいと無理な願いを持ってしまう。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

織田信長。一番気になる人物なので後に残していた感がある。

常に鮮やかにこの国の人々の心を騒がしてきた男だ。

 

といっても戦国ものはつながっているので横山作品でも『徳川家康』『武田信玄』『豊臣秀吉』と読んでくればどうしたって信長は出て来るしどの作品でも主人公であるが如くの印象となる。

その織田信長を主人公にした本作にはどうしたって期待してしまうではないか。

 

 

本作は信長の幼少期は省いて濃姫と結婚する直前から始まる。

マムシと呼ばれる斉藤道三が愛した娘でありうつけと呼ばれる信長の正妻となる濃姫。この濃姫が素晴らしい魅力があるので信長物語はまた楽しくなる。信長と愛し愛されてしかも美しく恐ろしいほど頭が良い。こんな女性がいたのだろうかとわくわくするような女性である。

 

徳川家康』で語られた信長と家康の関係性も描かれる。信長15歳家康7歳なので近くに住んでいたとはいえ普通なら出会うこともなかったかもしれないが何事も普通ではない信長だ。歴史的事実はどうか知らないが捨てられた子供時代の家康を信長が目をかけて庇護しその辛抱強さを可愛く思ったという逸話はおもしろい。

特にまだ泳げない家康を川に投げ込んで助け上げ「竹千代、おぬしはこの信長の弟ぞ」という。「ならばふたりで力をあわせて日本中を斬りしたがえてやるのだ」

これに寒さで震えながら答える家康を信長は気に入る。

信長は信長らしく家康は家康らしい。

この場面が見られたので至極満足だ。

 

濃姫と信長の初対面後の場面。

「どちらが先に参るか、戦い抜こうぞ」と信長は言い、濃姫がしっかり答えている。

 

信長は他のふたり(家康と秀吉)と違うのは父親に愛され自分も愛していたところだ。

愛し愛されてる場面。

ついでに教育係からも愛され犬千代からも愛されてる。うつけ者と嫌われたと言いながらも結構愛されてる。

犬千代。明らかに趙雲だな。すごくデカかったらしいし。

 

一巻は信長の父親・織田信秀が四十二歳で死去するまでが描かれる。

織田家家督相続で割れ騒然とした中であった。

 

 

日本人の「好きな歴史上の人物」でほぼいつも一位ないしは上位にいる織田信長。彼が登場するドラマは数知れずだしその場面は皆楽しみにしてるはず。

私はそれほどドラマを見てはこなかったのですがそれでも信長は気になる人物であり演者も彼になるのは大いなる名誉でもありその演技を注目される緊張もあるでしょう。

 

さてそれはマンガ作品でも同じで信長を描くとなれば他よりも注目を集めるはず。どんな信長を描くかでその力量を計られてしまう。

ところが横山氏は極めてゆったりと本道を選び自分流で描き切っている、と見える。

それは『三国志』でもやはりそうだったわけでそのためより読みたくなってしまうのだ。