ガエル記

散策

『単行本未収録傑作集 死神 』横山光輝 その2

さて続けます。

ネタバレしますのでご注意を

 

4.『あの麻薬(ヤク)を追え』

最近麻薬をヤクと言わないですね。

ううむ、困ったこの作品。

見分けがしにくいほどかっこいい二人組。腕利きの秘密情報局員の彼らが麻薬運搬人を尾けて本拠をつきとめようとしたがまんまと巻かれてしまいホテルに泊まるのだが。

えーとこういう時って男二人ベッドを並べて寝るのが当たり前なのか?横山マンガではよくあるのだけど、さすがに別部屋にしないのかなあ。

男っぽい系と可愛い系なのも気になる。

 

ここだけ切り取ったらいかん

すごくやさしいんだねえ
(別にいいだろ)

 

すごく仲良しなかんじ

 

男の尻は描いちゃいけなかったのだろうか。なぜ隠すのか。

とにかく仲良すぎ

 

腕利きと呼ばれた主人公は絶体絶命のピンチに!

今まで信じ切っていた相棒が敵と通じていたのだ、と気づく。

じゃあトイレ以外は全部一緒だったってことお?

シャワーも一緒だったってことお?

 

かっこいい~

なんか別の意味に聞こえる

(なにしろまったく疑うことなく信じ切った仲なんだよな)

なんか別の意味に聞こえる

(そして新しい相棒もってことだろう)

 

5.『死神』

表題作の『死神』

色男ばかりの本作品集の中で唯一ブサイク系(ごめん)男性主人公なのだけどさすが表題作になっただけあってこれが秀逸なのだ。

 

売れない小説を書いているという主人公男。家賃をためて立ち退き要求されて新しい安部屋を捜し歩いている。

横山先生のキャラはご本人が背が高いのでブサイク系キャラも背が高いよね。

不動産店に入って「3千円くらいの家賃の部屋はないですか」と問う。「ここは東京ですからね」とこぼしながらも探すと不便な場所ながら一軒見つかる。

今にするとどのくらい。3万円くらいかな。

しかも一戸建てだという。そして行った先が

どういうこと?www

めちゃくちゃ興味わく

この時点で映画にしてほしい。わくわくしかない。

わくわくわくわく

そこはお化け屋敷のような荒れ果てた部屋だった。

と、不気味な音が

さて主人公がのぞいて見たものは。この面白さは味わっていただきたい。

 

本作品、時折横山光輝氏が描くホラーミステリーの中でも秀逸なのではないだろうか。

 

恐ろしい仕事だけど食事時間はちゃんとあるんだねえ。

やはり食事は大事。

 

6.『爆音(イグゾースト・ノイズ)』

ハンサムなんだよなあ。基本的に。

 

常に自信満々のカッコつけ男でほんとにかっこいいんだけど笑ってしまう。

仕事にも女にもまったく臆することがない男。痺れるねえ。

きっちり働く

 

この話でも女が悪い女だという仕掛けなのではあるが(って男も悪いんだからいいか)

悪い者同士ということで後味爽やか(かなあ)

 

7.『汚れた勝負服』

いつ見ても馬の描き方が美しくて好き。

横山先生が大好きな競馬の話。ホームズシリーズでも競馬の話があるのを思い出す。

どんでん返しを効かせた陰謀ストーリー。

 

8.『黒い噂』

松本清張的タイトル。内容も清張的。男は田宮二郎的。勿論悪い男の物語。

 

いつもより少し女性が丁寧に描かれている気がする。

悪い女性じゃないからか。

横山氏は女性嫌いというんじゃなくて悪女嫌いなだけってことなのかな。

いつものように悪い仕事はきっちりするが

という甘さのあるお話だった。

 

9.『千里眼ストーン』

『バビル2世』の前哨戦、ではなく『バビル2世』の後に描かれたものだった。(月日は不明だけど)

登山で遭難した少年伊奈さとるは不思議に光る石を見つけ舐めた(おいおい危ないぞ)ところ未来が予見できるようになってしまう。

教師の事故も予見した彼は怪しい男たちに襲われその後「政府の調査官」を名乗る人々に助けられる。

そして彼が山中で見つけた石が地球外から来た隕石でそれをなめると超能力が身に着くのだと教えられる。

そして調査員たちの前で再び石をなめ(だから危険だって)未来を予知するのだった。

 

その未来予知によると公害で海が汚染されスモッグのために空気が汚れている世界が見える。資源が乏しくなりゴミから石油を得るしかない。

地球上人口は爆発的に増え七十億人以上になっている。(現在80億人を上回っている模様。それどころじゃない)

都会には失業者があふれそこいらにゴロゴロしています。街には一本の植物も見ることはできません。

田舎の土地も痩せて雨が降ると植物が変色したり花びらに穴が開いたりします。

人々の心は荒み暴動が起きています。

地球の温度が四度高くなり北極の氷が解けて東京もニューヨークも海の中に。人々は資源の奪い合いで戦争に・・・

ここで伊奈しげるは予知をやめる。

調査員は「未来が必ずそうなるとは限らん。人間がそう馬鹿ではないと信じている」と少年を家に送っていく。

 

地球人口がこの予知よりすでに大きく上回っている80億なので(1973年では39億なので確かに70億は想像を絶する数なんだけど)他の予知とどう重ねたらいいか判断しにくい。

人口だけを考えるのなら70億をはるかに越えてもそこまでひどくはならなかった。(と思っているがなってるのかもしれない)

というか人口の増加が爆発的以上の爆発だったわけだな。

他の予知についてはもっと未来を言ってるならもうわからない。違う方向に進んでいる気もするが。

戦争体験をした横山氏は戦争が地球を滅亡する、と思ったのだろうが地球人の最期はもっと地味なものなのかもしれない。

無気力に死んでいく、というのも滅亡の道の一つにも思える。

もちろんどうなるのかわかるわけもない。