ガエル記

散策

『伊達政宗』原作:山岡荘八/画:横山光輝 その3

物語というのはそれが小説にしろマンガにしろ映画にしろ魅力的な人物をいかに描いていくかにあると思いますが本作の伊達政宗は確かに秀逸にキャラ立ちしています。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

勇猛果敢でありつつ人を食った智謀も持ちしかも容姿端麗なれど独眼であるという傷がよりキャラを強くする。あまりにもマンガのキャラクターすぎる。しかもなぜか実の母親に殺されそうになるほど憎まれてしまう。いったいどうしてこんな話ができたのか。

さらに毒殺されそうになっても「母に罪はない、母を咎めるな」と苦痛の中で訴える政宗に心打たれてしまう。

 

まあ私としては政宗・小十郎コンビもとい主従が話し合っている場面を見ているだけで幸福だ。

政宗が父の死で我を忘れて窮地に陥った人取り橋で小十郎が「やあやあ小十郎立派なり。 政宗これにて後見いたすぞ」と叫んで政宗を助けた場面は胸アツだった。

あまりに良くてこのふたりの関係を調べたらいろいろととんでもない逸話があって驚きました。

小十郎は政宗より十歳年上ということもあり政宗より先に子供ができてしまうのですがこの時小十郎は「主君より先に慶事があってはならぬ。もし子が男子なら生まれてすぐに殺すように」と命じたそうだ。これを知った政宗はすぐに手紙を書いてこれを諫め止めたという。そして命を長らえた赤子は片倉重長と名付けられ後に政宗の小姓となるのだが極めてまれな美貌の持ち主となりどうやら政宗と男色の関係にあったというのだがそ、それは父親としてはどうなのだ。

(まあ、政宗が止めなかったら死んでたわけだけど)

さらに重長のあまりの美男ぶりにあの小早川秀秋は彼を追いかけまわしたという執着ぶりだったので政宗は重長に「そう嫌わずに一度相手をしてあげたら」と書き送ったらしいのだが本作を読んでいると政宗なにやらいたずらしたのではないかと思ったりもする。(どういたずらできるのかは思いつかないが)

 

とマンガがまだ行ってないところまで先走りしてしまった。

うーん。まさか政宗が小十郎の息子に手を出している場面は描かれてはいないと思うのだが。

 

 

というか、横山マンガでは小十郎は政宗より十歳年上には見えず同い年むしろ政宗の方が大人びて見える。小十郎は

横山氏はそちらの方が好みだったのかもしれない。

とにかく小十郎は忠義に厚く政宗に仕えていると描かれる。軍師と記されているが本作では相談役に近い。

 

まあとにかく政宗の男前が光る。

 

そして

良すぎて死ぬ。

なぜか政宗は横顔がすてき。

頸から肩にかける線もいい。

 

政宗と秀吉、政宗と家康の関係の対比も面白い。

頓智の掛け合いの如き政宗vs秀吉も面白いがやはり政宗は家康のほうが食えなかったのだろうな。

ふたりにはないものがわしにはある。それは若さだ。と言う政宗。遅れて生まれたために戦国時代に入れなかった政宗がそれもまた良しとして対応していく様も清々しい。

 

それにしても秀吉の猿の話は笑える。三成も大変だ。

なにこれ

政宗

 

そして秀吉をあっと言わせる派手な軍装。さすが伊達者。