ガエル記

散策

『狼の星座』横山光輝 その3

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

部下たちを遊ばせてやろうとした健作は街中で警察に逮捕されてしまう。

部下たちは金貨四千枚の賄賂で健作を救い出した。

 

外へ出た健作は初雪の夜、山中で凍った河を渡る。

そして谷間を進む千匹以上もいる狼たちの群れを見る。健作は「これだけの狼を引き連れる狼のボスはどんなやつだろう。男ならこれくらいの部下を引き連れる大攬把になってみたいな」とつぶやく。

これは後に横山氏が描いた劉邦を思わせる。

 

がその直後、健作は行く手を阻む包麻兄弟の縄張りに入り込み銃撃戦となる。

敵はゆうに健作たちの二倍以上いたがこれまで負けたことのない健作は猛然と突き進んだ。しかし劣勢すぎた。「半分以上やられた」の声に健作は引き揚げを命じる。

彼らは単騎で逃げるルールがあった。健作は一人逃げ落ちるうちに狼の群れに襲われ馬を失い自らも負傷し気を失って倒れた。

 

健作を助けてくれたのは村の老人だった。老人は健作の傷が癒えるまで面倒を見てくれたのだ。

健作は老人から仲間が七十人死んでしまったと聞く。

その事実に健作は打ちのめされる。俺はいい気になっていたのではないか。前の大攬把だったら戦わず引き揚げていたはずだ、いや副頭目でもそうした。正月前で家族が待っている本拠地に俺一人がどのつらさげておめおめと帰れるだろうか。

もう一度別の部下を集め復讐するか、いやまた部下の命を失うだけだ。

 

老人から今は正月の二日前だと聞いた健作は決心する。老人に衣服と銃と銃弾、そして馬二頭を用意してもらい健作は礼を言って去った。

正月ならば包麻兄弟は年始の挨拶を受けるはずだ。その時なら近くに行けるだろう。健作は死ぬ覚悟だった。

 

健作は馬をそれぞれに用意し、新年のあいさつに来ましたと言ってあっさりと包麻兄弟に近づく。

そして包麻兄弟を打ち殺すと用意していた馬の片方を走らせる。その馬には樹木を引きずらせるよう結わえていた。雪の中その馬が走ると雪煙があがり追っ手はその馬を追いかけていく。

それを見た健作は「やったぜ、おっかあ」と何度も叫んだ。

そしてもう一頭の馬に乗ってその場を去った。

 

健作の団の本拠地では大攬把が単身復讐戦を行ったことが報じられていた。皆は大喜びで健作の帰りを待っていた。

が、健作は帰ってこなかった。

健作は多くの部下を死なせた苦しみで帰ることができずに彷徨っていた。

そしてやむなく朱銀玲の家へ足を運んだのだ。

銀玲の両親夫妻は快く健作を迎え入れてくれたが、ここで健作は銀玲がすでに崔興武の第四夫人になったことを知らされる。

母親が知らせたことで銀玲は健作の前に現れたがその背後には崔興武の部下たちがいた。銀玲は健作を売ったのだった。

衝撃に涙しながら健作は崔興武の部下たち共々銀玲を撃ち殺してしまう。

銀玲の両親は娘が恩を忘れ健作を売ったことを恥じ入って詫びた。

 

打ちひしがれた健作はやはり隙ができたのだろう。

銀玲の屋敷を去ってからの旅路で警察に捕まり投獄され首枷に手枷足枷に重りをつけられ過酷な牢生活を課せられる。

無惨に痩せ細った健作は処刑台に引き出されその首を落とされる寸前で見も知らぬ一団に救われた。

 

彼らはかつて健作が助けた老人の孫が率いる春峰大攬把の部下たちだった。

春峰の屋敷に運ばれた健作はやっと健康を取り戻した。

そして春峰大攬把と王白山大攬把との義兄弟の約束の儀式を執り行った。

 

しかしここで春峰の屋敷を探っていた密偵が発覚した。

春峰と王白山は話し合い健作を多倫の章嘉ラマの寺にかくまってもらうことにする。

 

ところがその密談を聞いていた者がいた。

健作はラマ寺へ行く途中でまたもや警察に捕らえられたのだ。

今度の警察は以前のようになってはならじと速攻で書類を作り上げ健作を処刑することにした。

そしたまたも処刑台から健作を救い出す一団がいたのだ。

そのために多くの犠牲者も出た。

救われた健作はどの自衛団なのかと問う。その答えは自衛団ではなく健作を迎え入れるはずの章嘉ラマの人々だったのだ。

章嘉ラマは必ず約束を守るのだという。

春峰の祖父から健作の守護を頼まれた章嘉ラマはすぐさま姚念甫・陳芝迂に救出を命じたのだ。

ふたりは拳法の達人として名をとどろかせた英雄だった。

そのふたりは健作を救う際にふたりとも命を落としていたのだ。

健作は言葉を失った。

 

ふむう。

やはりこれは男のロマン、として読むものなのだろう。

とはいえ現在の男たちが本作健作の生き様に憧れるかどうかだが。

というか本作の発表当時でも「馬賊頭目の物語」はさほど売れなかったように思えるし(増刷されてない)しかもデジタル化もされてないのだから。

とはいえ海賊が『ワンピース』という形で大人気になったのだから馬賊も可能性がないわけじゃない。

新しい形の馬賊とは。

 

感想あっさり終わらすはずだったのですが読んでいると夢中になってしまいとうとうその4までいくことになりました。

その4ではまたもや新たなる健作が観れます。

お楽しみに。