ガエル記

散策

『アリスのままで』リチャード・グラツァー/ワッシュ・ウェストモアランド

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記憶が無くなる、知性が無くなる、という話は西洋のものでとても多いように思えます。ただ過去に起きた記憶が無くなる、だけならまだいいのですが知性が衰えていくのは堪らない恐怖だからでしょう。

 

そうしたカテゴリの最も印象的な作品に『アルジャーノンに花束を』があります。それを読んだ頃の私はまだほんの子供でしたから単純に小説としての技巧的な面白さと主人公のアルジャーノンへの思いやりに感動しましたし、主人公チャーリーの頭脳は先天的なものであったのでなんの恐怖も抱くことはありませんでした。

 

アリスのままで』も遺伝性の若年性アルツハイマーという設定ではありますから同じ病気になるかどうかはわかりませんが年齢的な危険性はもう充分に考えられるわけです。

しかもすでに「物忘れがひどくなった」という症状は笑えるほど頻繁に感じています。

映画の内容説明を読んで映画を観始めてからこれまでに観たどんなホラーよりも怖ろしい気持ちが襲ってきました。(方向音痴は生まれつきなのでこれは年齢のせいではないと言い張りたい)

言語学者として着々と功績をあげてきたアリスにとって50歳でのアルツハイマー発症は特に残念な事柄に思えます。50歳という年齢は学者にとってはこれから、という時期であるでしょう。

 

しかも映画は彼女を愛する夫と子供たちと孫まで与えながら彼女自身は地獄にいるのだというこれ以上ない皮肉な設定を施します。

 

この映画で考えてしまうのは「早くアルツハイマー予防&治療薬が発明されるといいな」ということと「しかしそれが無理ならもう仕方ないよな」ということだけなのですよね。

自分が家族なら「良い施設を見つけなきゃ」という感じでしょうか。そして当事者であればどんどん何もかも判らなくなっていくだけですから「後のことは知ったこっちゃねーよ」ですかね。

始まったなら身辺整理をしていった方がいいのでしょうね。お気に入りの小説・マンガなんかを決めていかないとなあ。

 

それまではせっせと考えたり記録したりしていくだけ、ですね。