少し前に録画していた映画です。早く観なければと思いながら手が伸びずにいました。実は原作小説も買っていたのですがなかなか入り込めずそのままになっていました。
若い頃はそんな思いをすることはほとんどなかったのですが一途に小説を読みその世界に入るのが難しくなってしまっています。
今回映画をやっと観て小説を読みなおすとキャラクターが目に見えてきて驚きました。キャラクターがつかめるとすんなり読めてしまうものです。
しかし小説が読めずにいてよかったかもしれません。
小説と映画の設定が違うので小説に入り込んでいたら映画を観るのが辛かったように思えます。
以下ネタバレしますのでご注意を。
映画自体も観るのが遅れたのは他の方のレビューを見てあまり評価が冴えなかったせいもあるかもです。
ところが結果本作はとても良い作品でした。昨今の日本映画に多々不満のある私にとっては特別に評価したい内容でした。
なのにあまり騒がれることもなく評価もさほどされていないのはどうしてなのでしょうか。そこに日本映画が低迷している原因があるように思えます。
本作は鶴瓶さん主演とはなっていますが割合的には綾野剛・小松菜奈ふたりの行動が主になっていて画面的に動きはあります。
では問題は物語に恋愛がないことなのでしょうか。
本作の主要人物である秀さん(鶴瓶)チュウさん(綾野剛)島崎さん(小松菜奈)の間は恋愛感情ではなく友情で結ばれているのです。それはむしろ現在の感覚ではとても重要なことだと私は思っています。
精神病院が舞台となる心を病んだ登場人物の物語、となると昨今ではサイコパス的猟奇的ストーリーが流行りですが本作は実直な人間ドラマです。
私は『ショーシャンクの空に』を思い起こしました。
また「閉鎖病棟」というタイトルにつまずいている人が多いようなのも問題です。
病院自体は開放的なのになぜ「閉鎖病棟」なのかまったく閉鎖していないじゃないかと。
つまり閉鎖病棟なのは病院そのものではなく一般社会が閉鎖病棟なのだというお話です。(これは小説には書かれていたのではないでしょうか)
一般社会は閉鎖されていて彼ら彼女らのようなはみ出し者は中に入れないわけで島崎
しかしそこくらいは察してくださいね。
若く可愛らしい島崎さんは義父からそして院内でも横暴な男性患者にレイプされてしまいます。秀さんとチュウさんは非力ながら彼女を心配し自分たちも苦しみます。
そして秀さんは自分の人生をかけて彼女を守る決意をするのです。
そしてチュウさんはいつか秀さんと一緒に暮らそうと決意します。
そして島崎さんは生きていく決意をするのです。
こんなにも美しい映画が作られていたんだ、と私は最近失望していたことを恥じました。
とても良い映画なのです。多くの人に心から観て欲しいと思えます。
なのになぜ伝わっていないのでしょうか。
確かに派手な演出はありませんがここまで作品の良さが評価されていない事実は不思議としか言えません。
レビューになぜ「駄作」の文字が多いのか。
批判の焦点が私には的外れに思えてしまうのです。
妙な部分にこだわり大事な部分は読み取れないとしか思えないのです。
大傑作というわけではないでしょうがこの作品に好感が持てない観客が多いのであればよりいっそう日本映画は衰退していくのではないでしょうか。
余談ですが吾妻ひでお著『失踪日記2 アル中病棟』が映画化されないかと願っています。
アニメでもいいのですがこの場合は実写のほうがいいのでは、とも。しかし吾妻絵も捨てがたく難しいですができれば両方映画化されないでしょうか。
日本には素晴らしいコンテンツが溢れているのに映画化されるのはがっくりするものが多い。本当に謎です。