Ζガンダムの見どころは様々な女性たちだというのは誰しも認めるものでしょう。
主人公カミーユ自身可愛らしい容貌で女性の名前が付けられているというのがコンプレックスの少年なのですがこの少年カミーユに次々と個性的で魅力ある女性たちが絡んでくるという筋書きになっています。
カミーユ・ビダンという女性的で美男という名前からしてもこれは明らかに富野氏は『源氏物語』を下敷きにしているのではないでしょうか。
ところがこちらのカミーユ・ビダンは光源氏のように女漁りを意識してなどはいません。あくまで純情一途というキャラなのでちっともいやらしく感じさせないというのがまた狡い小悪魔なのはカミーユのほうですね。
幼馴染的な可愛いファをはじめお決まりの年上の上司女性エマ少尉のビンタ、陰のある謎の戦闘家でクアトロ大尉(シャア)の恋人にもなるレコア、シロッコに献身的なティターンズのサラそしてアムロの恋人・ベルトーチカも含めて過激な女性が多いのが特徴ですが戦場にいれば当たり前だとも思えます。
そしてガンダムシリーズ特有ヒロイン・ララァの系譜たるフォウ・ムラサメとラザミア・バダム。
戦争は誰にとっても脅威であり悲劇ですが彼女たちの運命はあまりにも過酷です。
自然発生的なニュータイプであるララァとは違い人工的ニュータイプという強化人間になぜ女性を選んでいるのか、とも思えますが逆に言えば
「男性はか弱き女性を守るもの」
という美談などはしょせん建前にすぎず実際にはか弱き女性を犠牲にしてきた歴史の事実はあるわけです。
平安時代の貴族の女性たちは優美ではあれど結局は男性社会の権力闘争に利用される存在でしかなかったと同じく『ゼータガンダム』の中でもまた同じ、ということです。
光源氏は良識ある男性と自分を思い込んで生きながら結局最愛の女性さえ幸福にすることはできない男にしかすぎませんでした。
『ゼータガンダム』に登場する男性たちは皆卑小にしか描かれていない。イケメンキャラの称号を持つシャアも何の力もない。
女性たちの苦悩に焦点を当てているアニメ作品なのです。
その苦悩は『源氏物語』で運命に苦しみ消えていく姫君たちに似ています。