ガエル記

散策

『たちあがる女』ベネディクト・エルリングソン

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良い映画と巡り合えました。ほとんどまったく観ることのなかったアイスランドの映画ですが、こんなにも面白く楽しく深く考えさせてくれる作品があるのですね。

主人公女性の気持ちに寄り添って画面に演奏家やコーラス隊が登場し音楽を奏で歌うという演出もとても良い。

 

日本では「環境破壊反対運動に立ち上がる」といえば10代の少女が定番です。あのトゥンベリさんにしても日本のメディアが追いかけているというだけで実際には環境活動家には老女も中年女性もいるはずですが日本という国では少女でないと話題にしたくないのでしょう。

しかも映画となればなおさら、であるでしょうが本作のヒロインはしわもくっきりと表れるかなりの年齢は重ねているはずです。

独身の彼女は数年前養子をもらいたいという願書を提出していたのですが年齢的に除外されてしまったのが数年のうちに規則が変わり彼女の年齢でも許可されるようになったというような設定の女性です。

 

例えば『天気の子』のヒロインが老女であったらどうなのでしょうか。

日本の映画の可能性はまだまだ限りなくあるように思えます。同じようなものばかり作っている気がするので。

 

現在の日本では実写映画と呼ばれるものよりアニメ作品のほうがはるかに良質のものが作られています。しかし気になるのはいまだにアニメが「子供むけ」という奇妙なルールのもとで製作されていることです。そのため主人公がどうしても10代の少年少女でなければならない、という規定が暗黙下でなされているようですが実際はすでに大人が対象になっているのではないでしょうか。

これはマンガというメディアにも言えるのですが。

 

話を戻して、本作では主人公が過激な環境活動を行う一方で身寄りのない小さな女の子を養女にする話が語られていきます。

この視点は少年少女を主人公にした場合どうしてもできないものですが、物語の重要な視点であるといえます。

 

正義のために矢を放つ、自分の片割れである双子、戦う女、現在のヒロイックファンタジーに欠かせない要因が年長女性によって語られる、素晴らしい映画でした。