と思っていたのですが『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が始まってしまったので先にこちらを。
まずは前日譚「PROLOGUE」をアマゾンプライムで先に観ました。
前日譚は主人公スレッタ・マーキュリー幼児期の物語です。ただしここでは彼女の名前はエリクト・ソマヤでエリーと呼ばれています。
このプロローグ回秀逸の出来栄えです(〝も”というべきかもですが)
ガンダムシリーズはその作品ごとに独自の世界観があるものですがこの前日譚を観れば今回の作品の方向性が見えてきます。
ところでこのアニメ製作発表があってから私は本作のタイトルで「魔女」という単語が使われたことが私は若干引っかかっていました。
なぜなら日本のアニメで女性を登場させる時にあまりにも「魔女」というレッテルを貼りすぎているからです。
体力や頭脳や才能ではなく魔力を持つ女というレッテルをなぜこうも使いたがるのか。
それをガンダムシリーズまでが使ったことを訝しんでいたのですがこのプロローグに登場する女性科学者カルド・ナボのセリフを聞いて少し納得できた気がします。
彼女はこの世界のいわば救世主的な存在なのでしょう。
「宇宙では人間の体は脆弱すぎる」
そのためカルド博士は様々な医療技術を改良してきたのですがその先にダンダムモビルスーツがあるわけです。
エリクト・ソマヤの母エルノラは優れたパイロットですがカルド博士が開発しているガンダム・ルブリスに騎乗するための同調が進まずにいたのに娘エリーは乗ってすぐにルブリスに認識されたことには何らかの理由があるのでしょうか。
カルド博士をばあばと呼んで慕うエリーを抱き上げ語らう場面は劇的です。
「ばあばも〝この子(ルブリスのこと)”が大事?」
それに答えた「大事だよ」という声に様々な思いが込められているように聞こえました。このルブリスこそが人間が宇宙で生きていくために必要なのだと幼い少女に訴えたのは何故だったのでしょうか。
このカルド博士も「水星の魔女」なのかもしれません。
SFで「魔女」といえばやはり「DUNE砂の惑星」を思い出さずにはいられません。
べネ・ゲセリットは魔女を創り出す学校という機関でした。少女たちに特別な教育を施し政策に組み込んでいく目的のために設立されている、という設定なのです。
容姿端麗で且つ超能力とも言える才覚を持つ彼女たちはいわば人間兵器とも思えました。
もしかしたら本作はそうした意味合いも持っているのかもとも思えます。
なんの衒いもなく「ひとつふたつみっつ」と数えて敵機を破壊するエリーはもちろんそのまま殺人者でもあります。
凄まじいプロローグでした。
この回を観ただけでも生易しいSFアニメではないことがわかります。
この回を『水星の魔女』一話目にしなかったのはさすがに受け入れ難いだろうという判断でしょう。かといって冒頭に短く5分少々でまとめるのは無理だということで前日譚という別枠にしたのは正解と思います。
冒頭からあっさりと片腕が義手の母親描写と鬼の形相で死にに行く父親の映像は過酷すぎるでしょう。
しかしこの回は絶対に観なければならないエピソードには違いありません。
ということで始まる本編一話め。
学校の話から始まります。上の方で「べネゲセリット」の話をしたのでこれは気になります。
よくある話の一つ「少年が空から落ちてくる少女を助ける」があります。
ガンダムでも「ユニコーン」ですでにありましたが(「レコ」でも)本作では
「少女が空に浮かんでいる少女を助ける」
から始まりました。
ここからしてすでに「おや?」なのですが続く話が『少女革命ウテナ』だったのはTLで大騒ぎになっていた通りですね。
学校内で植物を大事に世話している美少女に婚約者がいて決闘でその花嫁を奪い新しくエンゲージの相手となる、ってそのまんまですわ。
とはいえ若干皮膚の色濃い目のスレッタのほうがウテナ役で気の強いミオリネがアンシーの立場と変わっていますね。
しかしこのあからさまな『ウテナ』パロディはオタク心を完全につかんでしまいました。巧いとしか言えません。周囲にいる男たちがちゃらいのもウテナ的で笑える。思いきり暁生の奴もいるしw
しかもあっさり一話目でスレッタとミオリネはエンゲージしちゃいましたし。
あの本格的SFで恐ろしかった『プロローグ』と真逆にメチャクチャ受け狙いに徹した本編一話目面白かったです。
ところでスレッタはそのままの色ではないけれどクセのある赤毛なのがなんとなくアムロ・レイを思わせます。内気だというのも共通点ではありますが前日譚を観ているとその生い立ちはまったく違いました。
両親との関係が冷えていて恵まれなかった安室と真逆で両親から大事にされ愛に溢れた幼少期を送ったスレッタの人格はアムロとはかなり違う形成をしているはずです。
しかしどこかアムロを思わせるのはガンダムテレビシリーズで初の女性主人公ということで初心に戻った意識はあるはずですね。
色々な面で意図を感じさせてくれる本作、めちゃくちゃ盛り上がっているようですが凄いことになっていく予感は満載です。