ガエル記

散策

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』安彦良和 ーまずは取り急ぎー

アマゾンプライムにて鑑賞。

実は鑑賞途中なのですが我慢できずに書いてしまいます。

この映画の感想で多くの賛辞と共に安彦良和氏の演出についての反感も目にしました。

 

私自身がこの作品でどう心が動くのか感動するのかそれともがっくりと失望してしまうのかある意味楽しみでもありました。

が、観始めてしばらくしてこれは客観的に観ることができる作品ではないと感じ始めました。

 

作品というのは観る者の感覚そして時代の感覚を抜きにして語れるものではありません。

評価される作品は常に時代の申し子でもあったはずです。

この作品もまたそうした感覚を抜きにして語れるわけもないはずです。

 

この映画を企画し製作していた時期には現在のウクライナ・ロシア侵攻が起きるとはまさか安彦監督が予想していたわけはないでしょう。なのにちょうど映画公開される時期に私たちはー戦争を知らずに生きてきた私たちはその恐怖をテレビやネットで知らされました。普通に暮らしていただけの普通の人々が殺戮され逃げ惑い苦しむ様を見聞きしました。

私たちの生活は決して容易いものではありませんがそれでもわけもわからず軍隊に殺されるかもしれない恐怖は知らずに生きてきました。

ウクライナの映像や人々の証言は私たちに侵略される恐怖を考えさせてくれました。

もしそれなしにこの作品『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を観たのであればどれほど過去の記憶を手繰り寄せきれるか、にかかっていたのでしょうが今現在報道を気にしている者ならばこの映画を客観的に観られるわけがないのです。

 

しかもウクライナは世界の食糧庫と呼ばれるほどに農業の国と聞きます。冒頭カイ・シデンが操縦するガン・キャノンが踏みつぶそうとしてしまう畑とそれを守ろうとする子どもたちの姿を見て現在のウクライナの状況を想像しないでいることができるのでしょうか。

これまで私たちは『ガンダムシリーズ』を他のロボットアニメよりもリアルなSF作品として観てきてはいたもののここまで実感としてアニメ映像にショックを受けたことはなかったはずです。

 

兵器を使った暴力が、というよりも戦争という名の暴力そしてすべての暴力というものがどんなに弱い者たちを蹂躙していくのか。

 

安彦良和監督の演出は学芸会のようだ」という評を見かけそれに賛同する評も見たのですがそれは戦争をする人々の様相がまさに「子供っぽい」からだと私は思います。

 

この作品は「どう思うだろうか」というような安直な作品ではありませんでした。

きちんと観て感じたことを改めて書きたいと思っています。