ガエル記

散策

『三国志』横山光輝 第三十八巻その2ー間道ー

力だけでなく知性を兼ね備えてしまった張飛

酒癖が悪くて大失態を犯した彼はもういない。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

張郃が逃げ込んだ瓦口関は天険の要害。

さすがの張飛も攻めあぐねいたずらに日を重ねていた。

 

馬で偵察に出た張飛は急な崖をよじ登る農夫たちを見つけた。彼らは故郷に帰る途中で合戦にあってしまい間道を通って国に帰ろうと山を登っていたのだった。

山を越えると小路があり瓦口関の背後に通じているという。

張飛魏延に瓦口関の正面を攻めさせ自らは農夫たちの案内で背後から攻め入る策略をとった。

作戦は難なく達成され張郃魏延を追っている間に張飛は背後から瓦口関へと入ったのだ。

今度は張郃が間道を抜けて徒歩で漢中南鄭城まで逃げ延び曹洪に平伏した。

曹洪は「張郃の首をはねい」と命令した。

馬超張飛は油断ならないと諫めたにもかかわらず曹洪を卑怯者呼ばわりし必ず張飛を討ち落として見せると豪語して出陣した。それが三万の兵を失いたったひとりでおめおめ生き延びてくるとは、と曹洪の怒りはごもっともなのだ。

しかしここで周囲の者たちは張郃の命乞いをした。張郃曹操様にも愛されていた大将もう一度手柄を立てさせてはと請うたのだ。

 

張郃は五千の兵を与えられ葭萌関を攻めることとなった。

汚名をそそがずば生きて帰らじと悲壮な決心であった。

 

葭萌関にいる孟達張郃軍を迎え打って出た。

が死に物狂いの張郃の勢いはすさまじく孟達は散々に敗けてしまったのである。

 

成都にいる玄徳のもとに葭萌関から援軍要請が届いた。

パリピ孔明』で孔明のセリフが頻繁に「・・・かと」となるのですが本作を読んでる分には今までまったくこの言い方は出てこなかった(と思う)

ここで「・・・かと」発言!出ました!www

やっぱり横光『三国志』からだったということでしょうかw

この「・・・かと」確かに印象的なんですよね。

 

本編に戻ると別の軍師らしき人物が「いや張飛は今忙しく別の大将になされた方が」と進言し「しかし張郃張飛に敗れたとは言え魏の名将。張飛でなければ太刀打ちできますまい」と口論となる。

これに待ったをかけたのが黄忠であった。

「まるでここには張飛しか将がいないかのように聞こえる」と釘を刺し「我等にそれほどの才はないかもしれませぬが命あらば生命かけて張郃の首を取って参る」

しかし孔明は「しかしながらあなたはすでに年老いとても相手になりますまい」と言い返す。

黄忠これに発奮し

もう萌え萌えすぎて死にそう。

孔明は「では厳顔を副将として連れていくことを命じます」と答えた。

この明るさ、いいねえ。

ダ、ダブル萌え萌え。二度死ぬ。

このふたりの人形絶対ほしい。

 

が、ここで口をはさんだのが趙雲だった(遅い)

「この大事に何故好んで老人を用いられる」

これに孔明は「この老将ふたりは必ずや張郃を破り漢中を取るであろう」

趙雲「しかし先ほど老人だからと」

だよね。

 

ダブル爺見参。

 

葭萌関の孟達らは爺様二人がやってきたのを見てがっかりする。

 

確かにちょっと不安になるかも。

しかしまあ儒教の世界。

信用してないwww

こうしてみると厳顔のほうがよりいっそう可愛いね。

やったれー。老人パワーみせたれー

 

こうしてふたりの老将は打って出た。

張郃も老人が攻めてきたと知らされ呆れひともみにもみつぶせと応戦した。

(このもみつぶすという言葉本作でよく使われるけど今ほとんど使わなくなったようだ)

張郃黄忠と一騎打ちしている間に後方から厳顔軍が迫り来て張郃軍は兵を引き上げざるを得なくなり陣を捨てて九十里後までさがったのだ。

 

この知らせを聞いた曹洪は激怒。しかし側近はまたもや制止した。

「今張郃を罪に問えばその前に蜀に寝返ってしまうでしょう」「ここは別の大将を差し向け共に敵を防ぐことが上策かと考えまする」

曹洪は怒りを鎮め夏侯尚と韓浩を援軍として送った。

韓浩は黄忠を裏切者と思っている。

 

ここで厳顔は黄忠に天蕩山といって曹操が兵糧を蓄えているところがある。そこをせめれば魏軍は食料補給が断たれる、と進言する。

黄忠は策を講じた。

黄忠と厳顔は二手に分かれ行動することになった。

 

翌日から黄忠は魏軍に攻められては陣を後退し続けるという様相となった。

夏侯尚たちは「あのような老人では戦にならぬわ」と大笑する。

ただひとり張郃黄忠ほどの剛の者が逃げまくるのはおかしいと案じるのだが夏侯尚と韓浩はこれをなじるだけであった。

 

一方黄忠はその後も対戦のたびに後退しつづけついに葭萌関に逃げ込んでしまう。

魏軍はその前に陣を張ったが黄忠は打ってでようともしなかった。

葭萌関の孟達らは五つの陣を取られたことを成都に知らせ至急援軍をと要請した。

孔明は使者に「厳顔は?」と聞くと「どこにもおりませぬ」と返事。

黄忠の驕兵の計でございましょう」と玄徳に言う。

しかし厳顔も老人じゃからのう、と心配する玄徳は我が養子である劉封を差し向けた。

 

黄忠劉封の到来に「これは驕兵の計じゃ」「軍師もそのように申されたが」

黄忠曰く「五つの陣に敵はせっせと食糧を運び込んでいるでござろう」

食糧がたまりきったところで一気に敵を蹴散らすそれが今夜。

劉封様もゆっくりご見物なされませ」と大笑した。

 

その夜、黄忠自ら五千の兵を率いて打って出た。夏侯尚も韓浩もすっかり油断して眠り込んでおり自分の馬も見つからず徒歩で逃げ出す始末であった。

勢いに乗った黄忠は追撃の手を緩めず一の陣から二の陣、三の陣と落としていく。

黄忠はため込まれた食糧と武器を葭萌関に運び込ませた。孟徳も大変な戦利品に唸る。

さあ我らは再び進撃じゃという黄忠劉封は呆れる。

元気な爺さんどころじゃない。

五千の精鋭は再び飛ぶように進撃を開始した。

(いやいや疲れないんじゃないか)

 

みすぼらしい姿で逃げ出した夏侯尚、韓浩は天蕩山には食糧も武器もある、とそこへ向かうことにした。

張郃のみが「敵もそれを知っているはず」と恐れていた。

天蕩山には夏侯尚の兄・夏侯徳が十万の兵で守っていた。

黄忠の奇襲に敗れ汚れはてた姿で到着した弟たちが兵を貸してもらい陣営を奪取したいと願い出るのを承諾した。

張郃は制止しようとしたが夏侯尚はこれを罵倒する。

そこに「黄忠到来」の声があがる。

疲れ切ってるはずの黄忠など恐れるに足らずと韓浩は武装して三千の兵を与えられ応戦したのだが黄忠の槍で討ち取られてしまったのだ。

夏侯徳は「あの白髪首を討ちとれ」と出撃したが山上から鬨の声が怒りあちこちから火の手があがった。

そこに現れたのが厳顔だった。

夏侯徳は厳顔に討ちとられてしまう。

こうしている間に火は峰を焦がし谷に満ちた。

火は人の心に恐怖を呼び起こす。魏軍は我先にと天蕩山を捨てて逃げ出したのである。

 

天蕩山奪取の報に成都は沸いた。

玄徳はこの大勝を喜び盛大な祝勝の宴を張った。

ここで法正は玄徳にここで一気に漢中を攻め手に入れる好機と進言する。

これに孔明も同意し、玄徳は「余は漢中平定の軍を今起こす」と明言した。

 

目録~

うれしい

続けて玄徳は黄忠に漢中の定軍山には夏侯淵がいる。今度はそこを攻めてみぬかと言う。これを黄忠は喜んでと受けるがここでもまた孔明が「我が君それはお待ちくだされ」と制止する。

これにまた黄忠むかっ腹を立てますます引き下がれませぬとなり孔明は法正を軍監として相談しながら行動を取ってくだされと命じた。

玄徳は孔明の言葉が矛盾しているので問うと

食えぬ人である

がこの後孔明趙雲黄忠の影となって敗けそうなら助け買ってる時は合戦に出るな、と言い含める。

厳顔には張飛魏延と交代するように伝え、劉邦孟達には山の険しい場所に旗印を立て並べ、我が軍の威勢を見せ敵の心を惑わせるのだ、と言いつける。

さらに馬超にも手紙を送った。

孔明が断を下すとその進行ぶりは見事なものであった。

黄忠

劉封孟達

張飛魏延

三方から漢中を目指したのである。

 

定軍山では夏侯淵がこの報を聞いて恐れていた。

豊かな国である漢中を取られてしまえば蜀は魏に匹敵する強大な国になってしまうぞ。

曹洪に援軍を頼み蜀軍を漢中に入れてはならん、と命じた。

 

蜀と魏

ここに再び風雲急を告げる。