ガエル記

散策

江戸川乱歩妖美劇画館 3巻(『白髪鬼』『闇の顔』)横山光輝 その2「闇の顔」

購入した本ではモノクロページでした。

なんか期待してしまうえっちな表紙ですね。

「白髪鬼」が読みたくて購入したのですがこちらの「闇の顔」だけでよければ


 

別バージョンの本もありました

 

闇の顔 (講談社漫画文庫) 

 

以下ネタバレしますのでご注意を。

 

昨日書いた「白髪鬼」よりその一年前に描かれた本作のほうがより横山光輝らしい作品といえるだろう。

 

一応乱歩『白髪鬼』を下敷きにしていると思われるのだがなにしろこちらは男性しか出てこない。

「白髪鬼」では美しいルリ子がなんと言っても目を引くがその役が大田黒という髭のおっさんになっている。これでは一般男子が喜べない。

なぜルリ子がおっさんになってしまうのだろうか。

それが横山マンガなのだろう。

 

主人公は金持ちではないが純朴な青年というのは同じ。これはいつもの横山主人公の特徴だから良しとして。

恋人のような大親友川村の役、というわけではないが主人公の仲良し役としては兄が設定される。

ただしこの兄、主人公が心底頼りにして慕っている兄は登場した途端殺される。

主人公の猛は父とも母とも思っていた兄が突然何者かに殺されたことに苦しみ怒り犯人を捜す。

が犯人は向こうからやってきた。兄を殺せと命じた大田黒という政治家が今度も部下に命じて猛をさらい山中にある「墓場」(「白髪鬼」と同じような場所)に閉じ込めてしまう。(拳銃も持っているのになぜ殺さないのか)

「墓場」の中で猛は飢えと渇きに苦しみそこに収められている骸骨となった遺体に恐怖する。

必死で穴を掘り続け外へ出られた猛の顔は年を取り白髪に変わり一時的に記憶を失い病院に保護される。

やがて記憶を取り戻した猛は大田黒への復讐を果たしていく。

 

と、ほぼ筋書きは同じなのだがなにしろルリ子が髭のおっさんになってるので(しつこい)ほとんど同じに思えないw

いや同じに思えという方が無理。

あくまでも横山氏は純朴な青年が苦しみながらも行動していく姿が好きなのであって確かにその部分は同じなのだがルリ子は必要としなかったのだろう。

むしろ髭のおっさんが狂ってしまう方が面白いと思ったのではないだろうか。

しかしそれでは耽美ではないかもな。

(横山氏は耽美ではない)

はっきり言って「闇の顔」は「白髪鬼」に比べると面白くない。でもとても良い。

「白髪鬼」の方が一年間で技術を進みかつルリ子の美貌を含む乱歩の妙味が加わって点数的には上だろう。

だけど「闇の顔」の方がとても良いのだ。

 

一年後にきっちり耽美を描いてしまう技量を尊敬する。

でもなんだろう。

耽美な「白髪鬼」の美青年ふたりより優しい兄を慕っている猛くんの方がなぜか色っぽいのだ。

このあたり、名作と言われるケリー兄さんとジョンソン的なものがあるのだろう。

やはり横山光輝はどこまでも横山光輝なのだ。

「白髪鬼」と「闇の顔」を並べて収録したこの一冊、横山光輝とはなにか、を考えるのに素晴らしいテキストではなかろうか。

 

追記:X(Twitter)でひらさんから引用リポストいただき重要な情報を教えていただきました。

そうだったのかあああ!

確かに表紙だけでもカラーとモノクロページは全然違う!カラー復刻お願いしたいですねえ。

ひらさん、ありがとうございます。