ガエル記

散策

『伊賀の影丸』横山光輝 2巻

なにこの壮絶な美少年。信じられないくらい綺麗な顔なんだけど!

「七つの影法師の巻」「半蔵暗殺帳の巻」

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

冒頭は「七つの影法師」の最終部。

ここで描かれる「醜い顔になってしまったので包帯でそれを隠している」という題材は横山作品で何度も描かれている。

この時代に多かった題材だったようにも思えるし、他の作者も使っていたようにも思うが包帯男は『鉄人28号』でも使われているので横山氏としては気に入ったもしくは気になる設定なのだろうか。

幽鬼の「かならずお前を道づれにする」という執念によって天鬼もついに倒される。

 

そして夢麿。

夢麿さんは影丸が好きと見た。

 

そしてその影丸

すっごくキチンとちんまり寝ているのがかわいい。刀もちゃんと枕元に置いて。

 

夢麿は傷を負ったことを悔やむ影丸を励まして自分がけりをつけようとただひとり残った影法師魔風と対決する。

しかし忍法火輪で炎と煙に追い詰められ得意の催眠術をかけたがそれは自分自身が映った鏡だった。

「死ね」という言葉が自分自身にかかってしまったのだ。

夢麿もまた倒れることとなった。

 

影丸は自分の不甲斐なさを嘆く。そこへ影法師の生き残り魔風から矢文が射ち込まれた。

生き残り同士の果し合いを促すものだった。

半蔵は「わしが責任をとればよいことじゃ」と言って影丸を押しとどめた。

 

が、影丸は半蔵に黙って時間より早く決闘の場霞ヶ原へ赴き魔風の火術に対抗する下準備を行う。

やがて来た魔風は影丸に得意の火術を行うが前もって施していた影丸の火薬に引火し霞ヶ原は火の海となった。魔風も動けない。

やがて火が収まり魔風が飛び出してきたのを影丸は見逃さず得意の術である痺れ薬を含んだ木の葉を流しこんだ。

 

半蔵が駆け込んできた時には勝負は終わっていた。

 

数か月後、七つの影法師が破れたとはいえ伊賀七人衆に互角の勝負をしたことに気を良くし薩摩藩は隠密組織を作ったのである。

それ以後薩摩藩に忍び込んだ幕府隠密は一人として生きて帰れた者はいなかった。

薩摩・長州連合軍に徳川幕府が倒される運命はこの時決まったのかもしれない・・・

 

だとすれば『伊賀の影丸』という作品はやがて来る幕府の終末を予感したものなのか。

その中で命懸けで戦う忍者たちという悲しい物語だ。

 

この巻の最後まで読んだのだがいろいろ変な味のある巻である。

まずはこの表紙もなんだけどふざけたコメディ感がありながらその内容は深刻なのだ。

それが横山味なのだろうか。

 

半蔵暗殺帳というタイトル通り半蔵が何度も襲われるのだがそれもなんか笑える。頭痛のする睡眠薬をかがされ柱に隠されていた巻物が盗まれる。

もうちょっとなんかこう工夫というか

それは服部家に受け継がれる「服部家の闇」を書き記したもので絶対に盗まれてはいけないものなのだがそれが簡単に寝室(というのか)の柱に簡単な仕掛けで収納されているのもおかしい。

巻物を盗まれた半蔵の言葉。さすが横山節。ネットミームにさんざんなるだけあって大事なことを二回繰り返している。

この半蔵の慌てぶりがまたおかしい。

 

巻物を取り返すため次々と人命が奪われていく。

 

そして

盗まれた巻物に短刀を打ちこまれるも半分取り返すクロかわいい。

以前も載せたがこれは・・・

 

大切な巻物が半分になっていたのに優しい口調の半蔵。愛犬家だね。

だから。そんなに大切ならあんな簡単な収納したのはそもそも半蔵のせいじゃん?

 

この人も熱い忠義心の思いがあるんだね。ぐすん。

 

いやいくらなんでもまた同じ場所に置いてたら半蔵間抜けすぎでしょ

でも結局逃げられてしまい、しかも烏丸はじめみな殺されてしまう。

ううう、半蔵(うう「はんぞう」と打つと「范増」と出てしまうのよ)のせいで忍者の命が簡単に失われていく。

烏丸は「奴らと互角に戦えるのは影丸だけ」と言って息絶える。

 

ここから暗殺帳を狙う飛騨忍者群と半蔵・影丸伊賀忍者群の壮絶な争いが始まるが、巻物一つというか半分のためにあまりにも虚しい戦いではないか。

その巻物一つでどうなるというのだろう。

 

ぴちぴちした影丸とくらべ大三郎の荒み切った容貌も悲しい。

こうなるまでどれほどの戦いを経て来たのか。

そして捨て身で火薬玉を爆発させ自ら負傷し目も見えなくなりながら走り抜き崖から落ちて死んでしまうのだ。

横山光輝が『伊賀の影丸』で描いているのはこれなんだと思う。

 

とにかく忍者が死ぬ。簡単に死ぬ。

この凄惨さというより人命の軽さは白土三平より酷いように思える。

それは娯楽漫画だからの適当さではなくそういうものだという横山作品の特徴なのだろう。