ガエル記

散策

『伊賀の影丸』横山光輝 15巻 最終巻

「闇一族の巻・その二」

最終巻ですが読者にはまったく最終巻どころか途中という不思議。

この表紙とても塗りが丁寧で綺麗に思えるのですが。影丸くん、凄すぎて少年というイメージが薄いですがこの絵ではほっぺがぴかっとしてて初々しい。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

闇一族・岩風と左門は村雨兄弟の末弟・源太郎を捕え連れ去る。

いちいちイヤラシイ。子供相手によお。

 

源太郎の目印に気づいた霧丸は跡を追うが解らず、影丸と共に探し始める。

横山マンガには珍しく変形コマになっている。

 

源太郎は痛々しい姿にもかかわらずここでも勝気に助けにきた影丸に気づき足で柱を叩いて合図を送り「助ける前に武士を追いかけろ」と伝える。

影丸はいったん引き揚げ皆で作戦を練る。

長兄・右門と影丸が尾形という武士を追いかけ霧丸と十郎太が源太郎を見張ることとなった。

 

ここからかつて語られた有名な場面になるのだが(言い方)

闇一族・火炎に鞭でしたたか打ち据えられる源太郎を覗き見て(そこはあげません)

何も吐かない源太郎に業を煮やして水桶につっこむ

確かにいつもは感情表現を細かく描かない横山氏が源太郎の拷問場面だけ丁寧に描写しているのがより際立って見える。

 

ここから先、張り詰めた二組の戦いが繰り広げられる。

右門は尾形という武士を見つけ気絶させて連れ去ろうとするがそこに闇一族・左門が現れる。しかし右門の前に左門は逆に追い詰められ必死に岩風の名を呼び求めた。

が、岩風もまた影丸との死闘で動けずにいた。

左門は右門の前に倒れる。

爆破音を聞いた岩風は影丸の攻撃をよけながら左門の元へ走る。そして尾形を背負って去っていく右門を追いかけた。

しかしこの追撃を影丸は許さない。

執拗に追う岩風に手裏剣を打つ。傷を負いながらも岩風は追いかけた。

岩風が放った小刀を右門はよける。そのまま立ち去る岩風を不審に思う右門はその小刀が尾形という武士の背に刺さっていたのを見た。岩風は尾形が口を割るのを怖れたのだ。

木立の中を走ると隠れながら攻撃してくるに違いないと考えた岩風はあえて草原を走った。

その草むらを縫って迫りくるものを見た岩風はふぶきを仕掛けるがそれはネズミだった。

またも迫ってくる何かを怖れる岩風。何度攻撃してもネズミばかりなのに苛立つ岩風に影丸は更なる仕掛けを向けた。

「ことごとく打ち砕いてやるわ」とふぶきを仕掛けると爆音が轟く。影丸の仕掛けを爆破してしまったのだ。

傷だらけの体で走り去る岩風を影丸は追った。

ここはもう映画のように見える。

動いていないはずの絵が動き出していく。

復讐を誓ったもののさらに斬りつけられた岩風は瀕死の状態で小舟にたどりつく。

「逃がさんぞ」と船に飛び乗る影丸に岩風は哀願した。

「このままそっと死なせてくれぬか」

刀を収め船を降りる影丸

影丸は岩風の乗った小舟を押しやった。

 

その船を見送る影丸

 

右門と影丸は源太郎を助けるために忍者屋敷へと戻る。

霧丸は隙をついて源太郎が捕らわれている納屋へと入って源太郎を解き放ち火炎と対峙した。が、火炎が気づかぬうちに霧丸は姿を消す。

火炎は納屋に火をつけ霧丸をいぶりだそうとしたがいつのまにか霧丸は火炎の背後にいて彼を羽交い絞めにし毒針を打ちこんだ。

そこへ来たのが首領である蓮台寺だった。

蓮台寺は槍を持って部下である火炎の体を貫いて霧丸を串刺しにしたのだ。

 

残る部下は一人となった蓮台寺はなおも使命を果たそうとするが右門と相打ちとなって逃れ川に流されていく。

右門は傷を負いながらも影丸のもとへ走り「弟たちを頼む」と言い残して死んだ。

 

川に流されていく蓮台寺を見つけた海老は助け上げるが追っ手を感じ蓮台寺を隠した。追っ手は村雨兄弟の十郎太だった。

海老と十郎太はどちらも水の中の対決を得意とした。

海老は十郎太の攻撃から逃れ尾州へと走った。

 

ここで影丸は事実をつきつけられる。

敵は将軍家御三家の一つだったのだ。

 

傷を負った蓮台寺影丸と対峙するがすでに敵ではなかった。

蓮台寺は己の最期を知って自爆する。

 

事の顛末は半蔵に知らされご老中へと報じられる。

「この事件は闇から闇へと葬るしかない」というのが結論だった。

今回の件は尾州公の将軍家に対する嫌がらせ、だったのだ。

 

これを聞いた影丸は「つまらんことだな。たんなるいやがらせのために恨みもない大勢の人間が殺し殺されていった」と思いを口にする。

 

再び海老は水中へ潜りそれを十郎太が追いかけた。

が、海老は水中で切腹して果てたのだ。

「これでわれわれはやくめをはたしたわけか」

何も得るもののない惨めな終わりだった。

そのために仲のいい五兄弟は三人も失われたのだ。

 

この悲しさは何とも言えず胸を打つ。

権力者は下々の悲劇など何も思ってはいない。