ガエル記

散策

『華氏119』マイケル・ムーア

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観てしまいました。なんと言ったらいいのでしょうか。

怖ろしい濁流がある。二つの橋が架かっているが、右か左か、どちらを向いてもどちらの橋も腐りきっていて渡ることはできそうにない。

どうしようもなく深い絶望。

なにかを信じたくても何も信じることはできない。

 

まるで日本のことを描いているかのようでした。

小粒ではあるのかもしれませんが、まるきりそのままです。

人種差別「ここから出ていけ」と言う罵声。

汚染された水を飲むしかない人々。

年取った女性をどつく男たち。

日本社会そのものを見ているようです。

なににもまして衝撃だったのは素晴らしい大統領だと信じ切っていたオバマが黒人が多く住む町フリントの住人たちの期待を裏切ったことでした。

 

裏切り。

確かにオバマに対して多くの人が夢を見すぎてしまったのかもしれません。それでもこのドキュメンタリー映画オバマはあまりにも無惨すぎます。

この映画を観るまで彼のことを信じ切っていた私はまんまとフリントの人たちと同じように彼の登場にほっと胸をなでおろしてしまいました。

「これですべてが変わる」

チェンジ。確かに彼はその言葉を期待させました。

しかし実際は、何も変わらなかったのです。

 

水道水が民営化した町フリント。

それまではヒューロン湖を水源として生活していた町にある日を境にフリント川の水が供給されることとなった。

供給された水は鉛を含んでおりフリントの人々、特に子供たちには次々と健康被害が現れていく。

鉛の毒は不可逆的で子孫にまで影響があると医師は語る。基準を図る検査には不正があり、上層部はこれを秘密にした。

 

フリントはマイケル・ムーア監督自身のふるさとであるという。

ミシガン州デトロイトの近郊の町。自動車工場だけにはヒューロン湖からの正常な水が運ばれるのだ。自動車に害が及ばないように。

 

日本、特に福島では放射能汚染の問題が今も人々を苦しめています。

どちらも、どうしてこんな怖ろしいことを取り除くことができないのでしょうか。

 

このドキュメンタリーではトランプ大統領だけを追求するのではなく何故彼のような奇天烈な人間を大統領に選んでしまったのか、選ぶ道に進んでしまったのかを探っていくのです。

その結果、民主党共和党もどちらにも腐敗があるのだと知っていく。

ムーア監督は「トランプのおかけで政治を深く考えるようになった」と言っていますが、私も「安倍総理のおかげで初めて政治を考えるようになりました」と思っています。

できるものなら政治など考えずのほほんと生きていたかったけど、トランプ政権と写し鏡のように日本社会も腐りきっていっているのです。

貧者を追い詰め、財産家を優遇する。

さまざまな政策が悪い方向へと流れていく。

 

失望し、絶望しきったムーア監督に残された希望は10代の少年少女の活躍だけのようです。

さて日本では、それだけは同じではないのかもしれません。

 

私たちはどうすればいいのでしょうか。