先日アマプラで偶然観てしまった『ベイビーブラザー』で久々私的大興奮推奨映画監督となったマーク・ミュンデンのもっと以前2007年の映画です。
最初に観た映画が良かったからと言って必ずしもということはありませんが『ベイビー』の感じからしてあまり心配はしていませんでしたが、予想以上に良い映画作品でした。
『ベイビー』もですが本作もいかにもイギリス作家のテイストを感じます。こうした一部に焦点をあてて闇を見つめる手法はお得意のイギリス映画ですね。私は大好きなのですが日本映画にはなぜかこの感覚がないように思えます。
2003年イラク・バスラに駐留したイギリス軍の兵士たちは復興を目指した治安維持を命じられていた。「イラク人に対しては敬意を持て。不要な虐待を行う者にはカインの烙印が押されるぞ」
しかし軍内部での軋轢、一般市民たちの暴動、過激派による攻撃、恐怖が若い兵士たちに襲い掛かり精神は追い詰められていく。
銃撃戦による死者を出し、上層部の指示も変化していく。若者たちはもう後戻りはできないのだ。
隊長の促しもあって捕虜に行った虐待は屈辱であり惨たらしいものであった。気が弱く「甘ちゃん」と呼ばれていた若者も暴行に参加させられる。馬鹿にされないために彼は捕虜を殴りつけ性的暴行に及んだ。
DVDパッケージ写真のような戦闘は映画が始まって半分もないでしょう。後半は帰宅した若者たちの運命が描かれていきます。
家族やガールフレンドは以前とはすっかり変わってしまった彼らに戸惑います。そして携帯に保存されていた捕虜への虐待画像を見て驚き警察に通報してしまうのです。
「甘ちゃん」と呼ばれて暴行を行ったマークは精神に異変を感じます。
「これがカインの烙印なんだ」
神様は見ておられる、ということですね。
弟アベルを殺したのに神に問われても「私は弟の監視者ではない」と答えたカイン。
「勇気とは忠誠ではなく間違った行為に反抗できることだった」
と嘆くマーク。
その勇気は普通の社会にいても問われてしまうものです。
ましてや「忖度」という更なる忠誠が当然の社会で反抗という勇気をみることは稀です。
カインの刻印という意識はこの国にはないように思えます。