また良い映画を観てしまいました。
ペ・ドゥナはなぜこうも良いのか。少女の腕の細さが印象的でした。
いろいろな意味で刺さる作品です。
ネタバレしますのでご注意を。
まずは韓国の田舎の風景と人間模様に何とも言えない気持ちになりました。初めて感じたわけではなく韓国映画を観るたびに日本とは全く違うと思うこともありつつこうした田舎の風情や飲み方を観ていると他国では感じない「日本と似てる感」を大いに持ちます。今では少なくなったのでしょうか、昔の田舎ではよく観られた光景であろうあの羽目を外した騒ぎ方感がなんとも恥ずかしくも微笑ましくも思うのです。
そんな田舎町の小さな警察所所長として赴任したイ・ヨンナム(ぺ・ドゥナ)でした。辺鄙な漁村の村民は一応体裁は保っているものの女性所長への態度はなんとなく居心地の悪さを感じさせるのでした。
その村でヨンナムは薄着姿でうろつく異様な少女の姿を見かけます。彼女は村に住む中学生ですが同級生から酷い虐めを受けているだけでなく継父とその母親からも惨たらしいほどの虐待を受け続けていたのです。
見かねたヨンナムは少女・ドヒを自宅で擁護し夏休みを過ごすのでした。
なんとなく良い話で落ち着くのかと思いきやここから物語はくねり始めます。
ドヒを虐待していた義理の祖母の事故死の謎、継父ヨンハは不法就労者を雇い彼らにも暴力をふるっているのですが村の役に立つ男だということで警察官も大目に見ている事実。
そしてそのヨンハからヨンナムは隠していた秘密を悟られてしまうのです。それはヨンナムの元恋人である女性とキスをしている場面を見られてしまったことからでした。
イ・ヨンナムがこの寂れた漁村に追いやられたのは同性愛者だったからなのでした。
この映画作品、首をかしげてしまう設定が数えきれないほどにあります。それで表現方法を少し間違えていたのでは、とも思えてくるのです。
このキス目撃などむしろ同性同士の親友が再会で酔っ払った後駐車場でハグしていたと言えば誰も問題にするはずもなく。
また継父から虐待を受けている少女を見つけたら施設を考えるのが当然であるしそうしないのはやはりヨンナムにどこかそうした期待があると思えなくはない。
ヨンナムに保護されたドヒがすぐに彼女との生活に甘えてしまうのも含め義祖母の殺害疑惑、そしてヨンナムを救うために継父が自分への性虐待で逮捕されるよう仕掛けるなどドヒという少女が不思議な魔性を秘めていることにヨンナムが惹かれていると表現したほうが良かったようにも思えます。
もしかしたら西洋映画で男性と少年の組み合わせならこうした関係を描いたものがあったのではないでしょうか。
やや描き切れてない気もするのですがこれまでにあまりない成人女性と少女の関係であること、演じたのがぺ・ドゥナとキム・セロンという逸材であったこともあり私にはとても良い映画だと感じられました。
そしてやはり監督は女性でしたね。
映画界ではまだまだ少ない女性監督。そこから好きになれる数はまた少ないのですが、チョン・ジュリ監督はしっかり私の好きな女性監督として記載します。以前記事にした『はちどり』のキム・ボラ監督も女性同士の関係を深く描いていました。映画の中で男性同士の関係(敵にしろ仲間にしろ)を描いたものは星の数ですが女性同士の関係はまだまだ少ないと思えます。
現在はそうした女性たちを深く描く物語は多く生み出されていますがそれでもまだまだたらないのです。
韓国映画も圧倒的に男性映画が多いイメージですが(それがまたかっこいいんですが)女性の物語もこのように素晴らしく登場してきて期待されます。
日本映画は・・・・諦めていますw日本のマンガアニメでは増えてきていると感じますね。