アラン・パーカー監督が逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。
映画が好きでかなりの数の映画を観てきましたが青春期に最も影響を受け共感できた作家がアラン・パーカーでした。
以下、氏の映画のネタバレになりますのでご注意を。
私たち世代でアラン・パーカーの名前を初めて意識したのは『小さな恋のメロディ』の脚本家としてでしょうか。当地イギリスとアメリカではヒットしなかったというこの甘く幼い恋物語は日本(wikiによると南米でも)では爆発的なヒットをしたことをマジで記憶しています。子供時代からラブストーリーに興味が薄かった私もこの作品に対しては強い印象を残しました。
幼い少年少女の恋が形式ばった大人への反抗として茶目っ気たっぷりに表現されていることが楽しい作品でした。
そしてアラン・パーカー監督としての『ダウンタウン物語』これも子供たちの大人へのアンチテーゼ作品ですね。この作品で出会ったジョディ・フォスターもずっと好きな俳優となっていきます。
監督次作の『ミッドナイトエクスプレス』この作品で私はアラン・パーカーの名前を強く意識しました。
今でも最も心に残る作品のひとつです。
1878年製作のこの作品を私は何歳の時に観れたのかはっきりとは思い出せませんがかなり早い時期だったとは思います。
麻薬の密輸をしようとした若者がトルコの刑務所に投獄されることとなる実話の物語ですがここまで表現してもいいのかと不安になるほど過激さなのでした。
どのくらいの脚色かはわかりませんが刑務所ではいきなり看守から足の裏を棒で殴られレイプされ(たと思われる描写)るという洗礼から始まります。
なんとも不思議に奇妙で過酷なトルコ刑務所の状況を耐えていた主人公は4年の刑期が30年に延期され、さらに友人が看守の暴力によって殺された時に精神のタガがふっとび看守の舌を食いちぎってしまいます。
主人公はさらに過酷な場所へ移され精神はますます歪められていきます。そして再び看守からレイプされそうになった彼はついに看守を殺して脱走するのです。
生き延びるにはミッドナイトエクスプレスに乗る(脱走)しかないという言葉どおりに。
こうした一人の若者の行動が単なる事実の描写ではなくなんともエキセントリックなむしろエモーショナルを感じさせて表現されていくのです。
この映画とアラン・パーカー監督は「社会派ドラマ」とレッテルされていきますが、私は『小さな恋のメロディ』『ダウンタウン物語』と同じく自由を奪う大人(体制)への反逆という若者の叫びを描く作者であると思っています。
主人公を演じたブラッド・デイヴィスの魅力も凄まじいものでした。
この映画はかなりの数見返した作品です。
次作『フェーム』は前作と違ってあまり観なおしてはいません。とはいえその当時(17・8歳ころ)に観て感銘を強く受けた作品です。
特に『ロッキーホラーショー』を映画館で観る場面が印象的でした。
『バーディ』(1984年製作1985年日本公開)アラン・パーカー作品で映画館で何度も観に行ってしまったのがこの作品です。
マシュー・モディンとその後大人気俳優になるニコラス・ケイジの若かりし頃の青春映画です。
二人の青年の関係だけを描いていく小さな世界の作品です。
マシュー演じるバーディは鳥の事しか考えていない奇妙な男で親友アルとのダブルデートでも女の子相手に何をして良いのかさっぱりわからない、というヘンテコな人物です。対するアル(ニコラス)は一般的な普通の男ですがこの奇天烈な友人を見放すことができずずっと気にかけてしまうのです。
この映画もやはりアラン・パーカーの大人への反抗作品です。
鳥だけを愛していたバーディはベトナム戦争へと駆り出され精神を病んでしまうのです。
同じくベトナム戦争で負傷したアルは離れることのできない友人バーディのいる病院を訪れます。
そこには心が鳥になってしまったバーディがいました。
バーディを抱きしめるしかないアルの姿。
ふと目を離したすきにバーディはとうとう鳥となって羽ばたいてしまうのです。
すばらしくアラン・パーカーの魅力を注ぎ込んだ映画作品です。
少しとばしてしまいますが
『ザ・コミットメンツ』とても面白い作品でした。バンドを描いた作品、というと主人公自身がボーカリスト、ギタリストというイメージを持ってしまいますがこれは「凄いバンドを作ってみたい」と念願した男の物語なのでした。
バンドメンバーに応募してきたみょうちきりんな大勢と面会して希望のバンドを作っていくのですが、ことは単純には進まず問題は累積していきます。
めちゃくちゃ大変そうですがめちゃくちゃ楽しい映画でした。
『エンジェルハート』『ミシシッピーバーニング』はどちらもアメリカの暗黒面という感じでした。
どちらも怖ろしい映画作品でしたがもう一度見直してみたいです。
こんなにも多くの素晴らしい映画作品を作ってくれた監督はそんなにはいません。
特に私にとっては貴重な青春の映画監督です。
まだ見ていない作品もあります。
それらを観れるのが今の楽しみです。