フィンチャー『ゾディアック』が好きでどうしようもない。
冗長だとか実話のために解決しないままなのでがっくりする、とかいろいろ悪口も多く書かれてしまう本作ですが、私としては2時間40分どころかもっと長く観ていたいし世の中に解決することなんかあるのかい、というのをわからない人がそういう感想を持つのだと思うだけなのでした。
ジェイク・ギレンホールが演じる主人公グレイスミスがマンガ家なのも凄くキュートだし彼自身がとても可愛いのももちろん魅力のひとつです。
そのうえ映画自体のとんでもない魅力に対して長すぎるとか(いや短すぎる私としては)解決しないとか(いやすでに私としてはこれ以上ない正解です)どうでもいい話なのです。
ネタバレします(すでに少しした)がご注意を。
この映画の魅力は映画と同じくらいかそれ以上にだらだらと話していくしかない。
なんといっても絵がとても美しい。
湖畔で恋人たちが殺される場面は壮絶でありながら整然とした静かな背景が逆に異常な残酷を感じさせます。
最近のこうした連続殺人事件映画は過剰に猟奇的な嗜好(死体に奇妙ないたずらをするとか、殺人方法自体が奇怪だとか)が多すぎますが本作はいわば「あたりまえ」の殺し方しかしていません。
それは殺し方よりもゾディアックの暗号による手紙に注目させる手法ではあるとしても私には非常に「好意が持てます」
解決しない、という点についてはすでに述べましたが人生ですべてが解決するということはありません。
恐怖は常にあり消えることはないのです。
本作はこの3人の男の人生を描いていきます。
主線はグレイスミス。マンガ家、というはっきりいってこの連続殺人事件にまったく関係ない男が事件に溺れていき自ら命の危険を感じるところにまで行くのです。
同時に妻子にも危険を感じさせてしまうのです。
第二はトースキー刑事。警察なのですから通常は彼が主人公でありそうですがこの物語では説明役としての配置です。
私は彼の話声が好きです。
第三はグレイスミスの同僚でゾディアックから脅迫を受けることになるエイヴリー。
そのためではないでしょうが最初目立っていた彼は物語から外れていきます。
本職であるトースキーも本職であるからこそ事件から離れしがないマンガ家のグレイスミスだけがゾディアックにとり憑かれ離れられない人生を送ることになります。
この描き方は実際警察でも記者でもない観客からすればもっとも共感できる形なのではないでしょうか。
マッチョでもなく暗号を解くのが得意、という以外はそこまで特別な頭脳でも超能力もない主人公が怖ろしい事件にのめりこむ本作に共感しないはずがない、と私は思ってしまうのですが。
ところでマンガ家、という役どころのせいなのかジェイクがディズニーのキャラクターに見えてしょうがないのです。
かなりの長身なのになぜか小柄に見える。
目が大きくてぎょろりとしてるのがキャラクターとしか思えなくて実写なのにアニメを観ている気になってしまうのです。
そう思っていると全員アニメキャラに見えてきました。
これもフィンチャーのマジックなのでしょうか。