ガエル記

散策

『DUNE/デューン 砂の惑星』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

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フランク・ハーバート著原作の愛読者であったなら今回の映画化を期待しながらも恐れていたはずでしょう。私は矢野徹訳で石森章太郎挿絵期の読者です。(なので表現が矢野訳になってしまいます)

 

この映画についてはおそらく何度も読むことになったはずですが以前デヴィッド・リンチ監督によるまさしくリンチ作品以外の何物でもない『DUNE』が公開された時は「そーだろーなー」という嘆息をつくしかなかったわけですが(いや素晴らしいリンチDUNEにちがいない)やはりこの物凄い物語の映画化は無理なのだとあきらめもしたのでした。

 

砂漠の惑星という凄まじいイメージのサンドウォーム、青い目のフレーメンたちの描写もさることながらクイサッツ・ハデラッハとしてDUNEに降り立った15歳の少年ポウルを演じることができる俳優が存在するのか。

あの世界を映画という映像の中に落とし込めるのか、何もかも無謀としか思えませんでした。

 

期待よりもむしろ観る前から諦めていたのですが観始めて数分後わたしはDUNEの砂の上に立っていました。

 

ティモシー・シャラメ演じるポウルはまさにポウルでしたしレイディ・ジェシカはべネ・ゲセリットでした。

DUNEがこのように風の吹きすさぶ荒々しい光景であるのを感じて打ちのめされました。ドラムサンドを歩む恐怖、サンドウォームは神だと感じました。

 

ダンカン・アイダホの男っぷりよ。ジェイソン・モモアに配役したセンスを称えたい。

 

DUNEの読者なら必ず中毒になってしまうペダンチックに溢れた言葉遣いは映画ではおとなしくなってしまっていますがこれも私は正解だったと思っています。

むしろ言葉を極力少なくして表現していくのが映画なのでしょう。

 

本作がわかりにくい、賛辞しているのは原作を読んだ人だけ、という批評の正否は私にはどうしようもありません。しかし原作を知っている場合、好きであるほど映像の評価は渋くなるのもまた事実です。

私にとっては映像化など絶対無理と思っていたものが想像を超えて具現化されたことが嬉しいというばかりです。

 

ヴィルヌーヴ監督は世界を作る力があるのだと改めて思わされました。