ガエル記

散策

『銀河英雄伝説』シーズン3 エピソード19あたり

今更なんですが原作者田中芳樹氏というか『銀河英雄伝説』はやはり帝国軍が好きなのだなあと思いました。

 

私自身は帝国軍嫌いというかラインハルトとキルヒアイスの関係が凄く苦手で正直言うとキルヒアイスが不気味で気持ち悪いのです。

私は完全ヤン・ウェンリー派でヤンとユリアンの関係は「いいなあ」と単純に思っていてヤンとヤンの仲間が好きなのです。

むしろ帝国軍ってなに?こいつら?くらいなのですが田中氏は帝国軍に魅力を感じておられるのだなあと今頃になって感じ入っているのでした。そもそもそうでなければ帝国軍という設定を持ち出しても来ないはずです。

 

とはいえこの時代のSF作者の設定はほとんど第二次世界大戦を模倣したものになっているといえましょう。

宇宙戦艦ヤマト』はもろに太平洋戦争を彷彿とさせますがこの場合の設定には当てはまらない感じです。ガミラス軍とヤマト軍はほとんど同質のようにさえ思えるからです。

機動戦士ガンダム』はジオン軍地球連邦軍といういわゆる帝国軍と同盟軍を意味する戦いとなっていますがジオン軍連邦軍イデオロギー人間性がそれほど違うように感じられません。それはむしろ多くの人が見やすい形態とも言えます。

『銀英伝』における帝国軍ではもっと時代がかった忠義心が描写されています。

今回の鑑賞でビュコック提督がラインハルトに「民主主義とは対等の友人を作る思想であって主従を作る思想ではないからだ」と告げるのですがこの言葉にぐっときてしまいました。

この言葉を聞いたラインハルトは口にはしないのですがキルヒアイスを想いだしビュコック提督の言葉を心中で否定します。「私にはキルヒアイスというかけがえのない友人がいた」と。

この場面を観て私は原作者田中芳樹氏はこうした帝国軍人に美学を見ているのだなあと改めて思わされたのです。

しかし私としてはキルヒアイスとラインハルトがどうしても対等の友人には見えません。キルヒアイスのラインハルトへの諂いがどうも肌に合わないのです。

とはいえそうした主従関係に一種の快感があるのは判らなくはありません。何故主従関係が快感なのか不思議と言えば不思議なのですが誰かを尊敬しその人のために命を懸ける死ねる、と誓うのは一種の陶酔なのです。

田中氏は理性ではヤン率いる同盟軍の仲間に賛同しながらもどうしてもラインハルトとキルヒアイスの主従関係を基本とする帝国軍の美学にも魅力を感じている人なのでしょう。

帝国軍の美学と同盟軍の煩雑さの両方が楽しめる、それが『銀河英雄伝説』ですね。