ガエル記

散策

横山光輝『バビル2世』『その名は101』そして『マーズ』

相変わらず冷たいバビル2世と言うか山野浩一君というか101

 

という前置きです。

 

横山光輝初心者の私です。『バビル2世』の後『その名は101』と『マーズ』を購読しました。

『101』はバビル2世その後の作品と銘打ってあるので当然ですが『マーズ』はなんとなく気になっての購読だったのですがこれがまったくのもうひとつの『バビル2世』といった内容だったので驚きました。

横光初心者なのでよくわからないのですがこれは天啓だったのかそれとも横山氏はこの題材を繰り返し試作されているのでしょうか。

 

とはいえなぜ『マーズ』が気になったのかは先日記事でも書いたように萩尾望都スター・レッド』と『バビル2世』が非常につながっていることから『スター・レッド』=火星=『マーズ』は火星って意味なのか?という連想からでした。

結果横光『マーズ』は火星の意味ではなかったのですが『バビル2世』と非常にリンクしていることがわかり嬉しい発覚でした。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

『その名は101』は『バビル2世』のその後の物語ですが時系列では『バビル2世』『マーズ』『その名は101』となっています。

 

『マーズ』の設定はほぼ『バビル2世』と言っていいのではないでしょうか。

宇宙人によって地球に「超能力者」が仕掛けられる、というのがその設定です。

ただ『バビル2世』では宇宙人バビルが正当な後継者を正義の心を持った少年に与えヨミはその力を持つものの邪悪であるがためにバビル2世と対抗して戦うことになるわけです。

この設定はとてもわかりやすくて面白く大ヒットするのも頷けます。

それと比較して『マーズ』は宇宙人によって「超能力者」が仕掛けられる、というところは同じなのですがその使命が真逆で最初から地球人に絶望しマーズによって地球を滅亡しようという目的から始まっているわけですね。

いわば『バビル2世』が人類の性善説なら『マーズ』は人類性悪説で製作されていくわけです。

ここらは永井豪デビルマン』を思わせます。『デビルマン』マンガは『マーズ』より3年も前に掲載終了された作品なので横山氏ももちろんその内容は知っていたはずです。つまり『マーズ』は『バビル2世』と同設定ながら物語は『デビルマン』に近いものになっています。

 

『マーズ』はバビル2世と同じような優れた超能力を持ちながら彼とは違って次第に人間たちに疎まれ激しい憎悪を向けられ攻撃されます。

冒頭では優しい少女・春美や正義感のある岩倉記者との交流で癒されていたマーズが本来の目的を思い出してしまう方向へと進んでしまうのです。

『マーズ』の最期は最初から語られていることなのですがやはり衝撃的には違いありません。

人類は「このままでは滅亡してしまうぞ」という予感をしながらもその方向へ突き進んでしまうものなのです。

 

その後に執筆された『その名は101』はこの『マーズ』の絶望感をそのまま受け継いでいるようです。

『バビル2世』では彼の活躍に寄り添っていた人間たちも『101』では姿を消し3つのしもべもほぼ登場しないまま山野浩一少年の孤独な戦いをしていくのです。

人間たちが求めるのは101の超能力が秘められたその血液であり彼自身ではなくなっています。

101こと山野浩一はもう誰も信じることができない寂しい存在となってその姿を消していくのです。

 

『バビル2世』では彼に好意を持つ伊賀野氏との交流があったのに『101』に登場するダンディ氏は何の未練もなく去ってしまいます。

 

 

 

横山マンガは明快で読みやすく楽しいのですが内容は悲劇的です。

逆に非常に深刻な内容を明朗快活に描いている、というべきなのかもしれません。

昔のマンガ的なタッチで読み間違えそうですが再映像化されるべき作品だと感じました。