ガエル記

散策

『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先 その4

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

夜中、文竜・武虎小屋で仲良く並んで寝てる。遠くで戦の退却の合図がしている。

小屋から覗くとどうやら敗れたのは魏軍で兵士たちが傷を負って逃げていく。

それを黒づくめの宋の騎馬隊が追いかける。

 

そこへ目を傷つけたらしく眼帯をした男がいきりたって入ってきた。

止めようとするふたりに剣を振り回す。仕方なく文竜が男を殴りつけると運悪くそこに鉾があり男の背中を突いてしまった。

男はうわごとのように「玉燕・・・」とつぶやいて倒れ死んでしまった。

 

ここから文竜・武虎の道行が少しずつ変わっていく。

 

突然ふたりの前で死んでしまった男・程徐には愛し合った少女・玉燕がいた。玉燕は一人旅の危険を防ぐために男の身なりをして程徐の行方を探し続けていた。

その道すがらとんでもない事態に陥ってしまう。

これは史実としてあるようなのだが、時の魏王は「竜陽君」という美少年を寵愛していた。ある時魏王と竜陽君が釣りをしていて竜陽君が次々とより大きな魚を釣り上げるのを見て王は喜んだ。ところがこれに竜陽君はさめざめと泣き悲しんだ。わけを聞くと「自分の立場はこの魚のようなもの。今は愛されていてもより美しい少年が現れれば王の心はそちらへとなびくのです」これを聞いた王は国中の美少年を殺して竜陽君を安心させようとした。

男装していた玉燕は美少年と思われ処刑場へと連行されたのだ。

そこに現れたのが龐涓だった。

史記』では学友の孫臏を騙して両足を切り落とす刑に陥れる(本作でも語られるが)卑怯な男として描かれるがここでは処刑される玉燕(男と思っている)に短刀を渡して「逃げろ」とささやく情のある人物になっている。(というか処刑される男を見ると自分の罪を思い出すのかもしれない)

玉燕はその短刀を使って危地を脱出する。しかもその時王の宝である汗血馬に乗って逃げる。

玉燕は逃げ延びた先であの酔いどれの朱豹と出会う。

朱豹は「女より酒が良い」という男で安心だ。

玉燕は石つぶてが得意という可愛い少女である。

良い絵だ。

 

この後このふたりは野犬に襲われたところを文竜・武虎と崑崙に助けられる。

朱豹は文竜を殺すことを目的としていたが野犬から助けてもらったということで義理堅くしばらく命は預けたと言って四人で朝食をとる。

 

四人連れは宋の黒騎馬隊に襲われて逃げ朱豹・武虎、文竜・玉燕に分かれてしまう。

そのまま夢中で読んでしまったのだけどここで文竜・武虎のバディが途切れてしまうのだ。

玉燕がとても魅力的な上に程徐を探し続ける姿がけなげでありそれを見守る文竜が切なくついつい情にほだされてしまった。

この組み合わせでの話も面白いのだが文竜・武虎バディをもっと楽しみたかった。

でも玉燕も可愛いんだよな。

悩む。

 

文竜は玉燕と幾度も離れようとしながら離れきれずに旅を続けついに黒騎馬隊の隊長となる羽目になる。

玉燕もついに思い人だった程徐の墓を見つけてしまう。

が、文竜は偶然とはいえ程徐を殺してしまったことを告白できない。(てか殺したと思うほうがおかしくて、事故なんじゃ)

それは文竜は次第に玉燕を好きになってしまったからだ。

 

ところで武虎は相変わらず兄貴を思って飲んべの朱豹と旅してるのもけなげでせつない。