『水滸伝』さすがに少しは学生時代に読んだ記憶がある程度だ。
幾人かの人物名は知ってるもののどういう物語なのかはほぼ知らず。なんか梁山泊に悪人どもが集まってる話だよね、というくらい。
さてどんな物語なのか、楽しみである。
出だしはかなりギャグ調だ。
いまからおよそ九百年前大宋国は平和だったがある時疫病が流行る。時の天子仁宗皇帝は竜虎山に住む仙人に病疫退散の祈祷を頼むことに決め使者を送った。
皇帝の使者・洪大将
ご馳走大好きな太っちょだけど「洪大将閣下自ら皇帝の勅書を捧げて登らねば仙人に会えません」と言われ渋々登っていく。めちゃ威張っていたのに「皇帝のために」と言われ虎に出会ったり大蛇に会ったりしながらも登っていく様子がなかなか健気である。
気づかないまま童子の姿に身を変えた仙人に会って目的は果たしたところまでは立派だったがその後「悪魔を閉じ込めているので開けてはいけない」と言う扉を好奇心で開けてしまう。
中には「洪に遭って開く」と書かれた石碑があった。予言されていたのだ。おもしろがった洪大将はその石碑も取り除きその下にあった鉄の扉を開かせると中から黒煙が立ち上り火の玉が走った。
その中には百八の悪魔を封じ込めていたという。
洪大将は不吉な恐怖にかられ都へと逃げ帰った。
そしてすぐ災難が訪れたならだけどその後数十年の年月が流れた、と書かれている。
えええ、洪さんなんてもう死去されたんじゃ。
とにかくその間太平無事の日が続いた、とある。んんん、悪魔関係あるのかな。
しかしあまりに平和が続いたため世の中はすっかり堕落し宮廷の高官たちは政治よりも遊びにうつつを抜かしていた。
高俅はそんな遊びが得意で出世した男で最高司令官にまでなった。
その高俅に目をつけられた男がいた。八十万禁軍師範王進である。
王進は数年前ヤクザから因縁をつけられ懲らしめたことがある。その時のヤクザが高俅だったのだ。王進は高俅が必ず自分を殺そうとするだろうと考え母親と共に延安府の親戚の所へ逃亡することを決意した。
一夜を過ごし旅立とうとした王進はその家の若者が棒術の稽古をしているのを見て「型は綺麗だがスキがある」と評した。それを聞いた史進は怒り勝負を求めた。
それを見た史進の父親は王進に「天狗の鼻をへし折っていただきたい」と願い出る。
王進が相手をすると勝気な史進はあっという間にねじ伏せられてしまった。
史進は平伏し王進の弟子になりたいと申し出る。
が、王進は旅の理由を話しその申し出は受けられないと告げる。しかしなおも史進は我が家に逗留して武芸を教えて欲しいと願い出、王進の母がそれに口添えして申し出を受けることとなった。
半年間教えた王進はやはり迷惑を怖れて母と共に延安府へと旅立った。
数年の時が流れた。
そんな時小崋山に住む山賊らが史進の村を襲ってきたのだ。
史進は村人を率いて山賊と戦い一人を捕える。が、身の危険恐れず仲間を助けにきた山賊に感嘆し酒を酌み交わした。
ところが褒美欲しさに史進の配下が山賊の襲撃を役人に密告したのだ。
山賊を匿おうとした史進は咎められ屋敷は役人たちの手によって焼きはらわれた。
仲間になって欲しいと願う山賊を断り史進は「これも運命か」と旅立っていったのだ。
さて史進は王進の行方を捜していたのだが途中の町で提轄(憲兵)の魯達という男に出会う。
魯達は史進の噂を知っていて「酒を酌み交わそう」と誘った。道すがらに史進の昔の師匠だった李忠に会い彼も合流する。
魯達はふたりに酒とご馳走を奢り興に乗って歌い始めたが隣室でさめざめと泣く声がして気になり泣き声の主を呼ぶと酒場歩きの歌うたいの父娘だった。
その父娘は鄭という肉屋に十貫の金を借りたのだが証文に三千貫と書かれていてとても払えないと泣いていたのだ。
それを聞いた魯達は父子に金を渡して逃げさせ自ら肉屋・鄭を訪ねて懲らしめようとした。
ところが力の強い魯達に殴られた鄭はそのまま息絶えてしまったのだ。
(だから暴力はだめなのだよ)
憲兵である自分が町人を殴り殺したとなっては死刑だと魯達は逃げ出した。
魯達は逃げる途中でも盗賊たちにこき使われている飢えた坊主たちを助けようとして逆にやられてしまうがそこへやってきた史進の手助けで盗賊らを成敗するが坊主たちは悲観してその間に自殺してしまっていた。
魯達と史進は伴って旅立つが魯達は東京開封へ史進は華州へと別れることとなった。
東京開封に着いた魯達はそこで助けた歌うたいの父娘と再会する。
今では娘が金持ちの趙という旦那に気に入られ何不自由なく過ごしているという。
娘が趙に頼むと趙は魯達に寺の僧侶になることを勧めた。
寺では趙さまの頼みならと魯達の頭を丸め名を魯智深と改めさせ菜園の番人とした。
魯達改め魯智深は錫杖を求め八十一斤を振り回して買い上げた。
菜園の番人はすることがない。退屈して錫杖を振り回していると覗き見している男を見つけた。
名を豹子頭林冲という。魯智深はその名も知っておりさっそくささやかな酒宴に誘う。
ところがそこへ林冲を呼びながら来た女児がいた。林冲の妻が武家にからかわれて困っているというのだ。
助けようかという魯智深をことわり林冲は矢のように走っていった。
林冲の妻に言い寄っていたのはなんと高俅の御曹司だった。
が、林冲の姿を見た取り巻きは怖れ御曹司を諫めて引き揚げさせた。
しかしその後名刀を買った林冲は「高家の名刀を盗んだ犯人」として逮捕されたのだ。
罠だった。
林冲に鞭打たれ自白を迫られた。
ここで代官は林冲が部下から無実だということを知らされる。とはいえ高家の訴えを退けるのは不可能。かといって無実の林冲を死罪にすればあらぬ噂が広がる。
代官はやむなく林冲を流刑にすることとした。
泣きすがる妻に林冲は別れを告げ首枷をつけられふたりの端公(小役人)に護送された。
途中、端公は高家の使者に金を渡され林冲の暗殺を頼まれる。大金を見た端公は武芸者の林冲を殺すため徹底的に虐待していくことにした。
魯智深は林冲を助けるため流刑地の滄州で過ごす方が良いと考えた。林冲を馬に乗せ端公を歩かせて滄州へと赴いた。
滄州へ到着した林冲は地方の大尽・柴進から目をかけられる。囚人の姿にただものではないと感じた柴進はその人が林冲だと聞き屋敷に招いた。
ところがその様子を面白く思わない男が武芸達者の洪をそそのかして林冲に勝負を挑ませた。
が勝負を受けた林冲は一瞬で洪を打ちのめした。
それを見た柴進はますます林冲に惹かれ牢獄へ向かう彼に銀子と手紙を渡した。
林冲はその手紙で軽い仕事に移されるが高家の手はここにも及んでいた。
林冲が住む小屋が外出した間に壊され焼き払われたのだ。そこにいれば自分は死んでいたのだと林冲は憤りその犯人を殺してしまう。
「これで東京の家族のもとへも帰れなくなった」
林冲は茫然とつぶやいた。