ガエル記

散策

『四枚の女王(クイン)』横山光輝

少女ブック1961年1月~7月号

やはり横山光輝描く女の子はかわいい。

60~70年代の荒んだ作品ばかり見ていると心がささくれてしまうのでちょいと癒しを。

しかしあらゆる分野を描いてしまう横山先生。ほんとマンガの達人だったのだと思わされる。

水木しげるマンガも今読んでいるのだけどこちらはほんとマンガ不器用だったのだと思う。可愛い女の子は描けなくてアシさんに描かせたという。そして正義の戦いが大嫌い。横山氏とは対照的だ。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

横山氏は導入部で引き込んでいくのがうまい。

シルクハットにマントといういで立ちの謎めいた男が説明を始める。

背が真っ白なトランプ、クインのカードを四枚集めると本当の幸福が訪れるが一枚だけだと必ず不幸になる、というのだ。

ところが主人公の真奈美はまさにそんなカードを一枚だけ拾ったのだった。

少女マンガに合った内容でしかも「どうなるのか」と思わせる。

主人公真奈美は両親を失ってるが優しい兄と暮らしている。兄は新聞社の記者だ。妹の真奈美が拾ったクインのカードが気になってしかたない。

そしてついに一枚だけのカードに「百万円もうけさせてみろ」と願いをかける。

果たしてその願いは競馬の大番狂わせという形で現実となってしまう。

しかし一枚だけのカードに願いをかけるとその人は必ず不幸になる。兄は願いをかなえた後記憶喪失になり真奈美のことも忘れ悪党たちの手下になってしまったのだ。

 

少女の頃にこのマンガを読んでいたらクインのカードが気になってしかたなかっただろう。よかった読めなくてw

この表紙もカッコよくて興味を惹く。

お兄さんがハンサム。

よこにいるわし鼻の男はなんと村雨竜作。ここに登場している。というか、お兄さんがあきらかに村雨健次なんだけどw

ミステリアスでお洒落な表紙絵ではありませんか。

 

この作品、読んだ後にまとめて言えばそんなに精密にできあがったものではないのですが殺された男が持っていたトランプが真奈美のところへ送られてくる、とか謎が謎を呼ぶ仕組みになっていてついつい読んでいってしまう、のです。

 

そして緊張感のある過程でこういうカットが入るのがうまい。

 

猫がストーリーに絡んでくる、という演出も女の子に添ったものだね。

ここかわいい。

 

「むむむ」すでにある。

「むむむ」の初出現ってあるのだろうな。

 

うーむ。こうして見ていても少女マンガシリーズも続けていてくださっていたらなあ。つくづく残念だ。

とはいえ年表で見ると先日絶賛した1975年「プリンセス」掲載『恋と十手とお銀ちゃん』が少女マンガとしては最後なのか。その前が週刊少女コミック掲載『クイーンフェニックス』これも絶賛しました。

男性マンガ家としてはかなり長い間描いてくださったとは言えるので仕方ない。

女性が苦手、女の子が描けない、と言われてしまう横山光輝氏ですが実際は他の男性マンガ家よりうまいと思うんですけどねえ。

(エッチなシーンが嫌いなだけじゃ)(それはむしろ長所では)

 

本作でかなり癒されました。楽しかったです。