ガエル記

散策

『伊賀の影丸』横山光輝 5巻

はい。最終巻です。全巻15巻ですが最終巻は5巻です。

影丸旅日記の巻」

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

この巻で終わりと思うと感慨ひとしおです。

何度読もうと思っても読み難かった本作の理由はこの秋田サンデーコミックス版が掲載順が違うのだと教わり正しい読み順を示していただいたらするすると読み進めていけたのはなんともありがたくも不思議でした。

そ、そんなにやっぱり読み順は大切なのね。読み切り短編形式とはいえ作者もやはり説明をしなくなっていくものなのでしょう。

それでもどこか本作の重要性と作者横山光輝氏の偉業をどこか解らずにいたのですが前回読んで言葉にはしにくいのですが白土三平忍者ものとは違う意義に触れたように感じました。

いわば白土作品はそのすごさが解りやすいのですが横山作品は逆にわかりにくいのではなでしょうか。作品自体は読みやすくわかりやすいのですがそれゆえに考えないままになってしまうような気がします。

それを思うと白土三平論以上に横山光輝論は必要です。手塚治虫石ノ森章太郎藤子不二雄各氏と比べても横山光輝を語る人が少なすぎる気がします。ざっとした私の印象ですが。

 

さて前置き長くなりました。

本編へと入りましょう。

 

今回、影丸は半蔵の指令を受けての旅に出る。

その内容は「葉山の城下に潜り込んだ伝蔵が「怪しい動きあり」と知らせてきたきりこの二か月連絡を絶った。何が起きたのか調べよ」というものだった。

簡単な仕事と思った影丸だったが旅立ってすぐに得体のしれない男たちに襲われる。これはただごとではないと身を引き締めた影丸だった。

 

なおも葉山の里に入ろうとする影丸をくい止めようとする者たちがいた。

そして件の伝蔵はあっけなく影丸を歓迎する態度だった。しかも連絡は続けていたというのだ。

影丸はいっそう怪しみ調査を開始する。

 

事は早く露見する。

葉山の里では「阿片」が出回っているのだ。

阿片欲しさに苦しむ人々がいた。

影丸はすぐに阿片窟発見の報を伝蔵にもたらす。伝蔵と共に阿片窟に駆け付けるもすでにそこは火事となり焼失してしまっていた。

さらに調査を続ける影丸だが鳥に襲われ伝蔵屋敷に戻ればまたもや火事となってあわやという事態を切り抜ける。

変装をして町の宿に宿泊する影丸は飛脚を雇って江戸まで手紙を運ばせさらに近くに「病気か気のふれたという人はいないか」と宿の番頭に問う。

番頭から聞いた銭屋に行くとそこの娘が酷く苦しんでいるのを見る。

「阿片中毒だ」影丸は憐みを感じながらその場を離れる。

しかしそんな影丸をさらに襲う者たちがいた。影丸は得意の木の葉火輪で逃げる。

 

銭屋の娘は首をつって自害した、と見せかけられた。影丸はすぐにこれを見破るが何者かの攻撃は留まらず続く。

そして葉山の里に忍び込んだ伝蔵が裏切者であり影丸を襲うための情報を流していたと確信して彼を討った。

伝蔵は阿片中毒にさせられていた。死の間際、影丸に「おそろしいのは夢乃丞、銀乃丞、阿片の秘密は御神楽山」と言い残した。

 

単身、御神楽山に潜入する影丸

その影丸の後を追う謎の三人に男たちがいた。

 

この三人の男は半蔵から送られた影丸の仲間だった。

しかし夢乃丞・銀乃丞によって一人は命を落とす。

しかも夢乃丞は不思議な術を使い眠っている源五郎の夢の中に現れ仲間の大三郎を殺させてしまう。

 

影丸は銀乃丞と対決するがその技を見破って討ち取る。

そして襲われている源五郎を助ける(おいおい、助太刀にきたのに助けられてるよ)

しかしそれは夢乃丞の計略だった。再び眠った源五郎の夢に入り込み側にいる影丸を殺させようとしたのだ。

だが影丸の力が源五郎より勝るためこの企みはうまくいかなかった。

影丸は逆に源五郎の夢に出る夢乃丞を観察させてその居場所を見破る。

夢乃丞を倒すため源五郎が眠る、という作戦がおもしろい。

夢に入っている夢乃丞は疲労しもろくなる。その時に影丸が襲うのだ。

夢乃丞は倒れた。

 

強敵を倒した影丸源五郎は葉山の里を調べる。

「お花畑だ」は草。「花畑」では語呂が悪いかな。

源五郎の目がかわいい。尾形みたい?

 

この直後、葉山城家老山形大膳が現れ「すべてこの大膳が私腹を肥やすためにやったこと」と言って切腹する。

こうして『伊賀の影丸』の「」となりました。

 

うわあ。これリアルタイムで読んでいたら「え?どういうこと?」ってなりそう。

ラスボスも出てこないし、海外留学もないのね。

世界に羽ばたいたりもしないのね。

かといって影丸が最愛の女性と出会って結婚もなく、かといって死ぬわけでもなく。

 

ハピエンでもアンハピエンでもなく。

 

完全に打ち切りの感じなのですが横山光輝氏としてはこれはこれで受けいれてしまわれたのだろうか。

 

とはいえこのラストは読み込んできた『伊賀の影丸』のラストとしてふさわしくも思えてしまう。

というのは影丸はただ淡々と指令をこなしていく仕事人でしかないからだ。

なにかに追われているわけでもなく復讐を誓っているのでもなく職業としての忍者なのだ。これからも体と精神が許す限りもしくは定年退職まで淡々と働き続けるのだろう。

上にも挙げた

この軽さ割り切り方、オンオフを明確にするのがサラリーマンのコツなのだ。

とても良い。

ここなんだと思う。

 

だからラスボスなどはいないのだ。

同僚と帰路を共にする影丸。友達ではなく同僚だ。それも良い。

 

皆さまの援助をいただきこの『伊賀の影丸』読了いたしました。

深く感謝いたします。

 

横山光輝作品の旅はまだまだ続きます。