ガエル記

散策

『月に咲く花の如く』その3

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さすがにもうやめよう、と思っていたのに周瑩の養父が面白すぎてやめそこねた。はっきり言って共演している俳優さんたちも感心して観ている気がするよ。

あの立ち回りは生半可な役者ではできないのではないでしょうか。

 

この繰り返しでやはり離れることができなくなる奴か。

しかも養父・周老四は沈星移のたくらみに乗って周瑩を引き離しに行かせられる、と思ったら逆に呉家に入り込んで義父母にまで感心されるというのか呆れられるというのかよくわからないですが一目置かれたのは確かでしょう(か?)

とにかくここの周老四の詐欺立ち回りが面白くておかしくて一番夢中で観てしまいましたw

なんでしょうか。

中国ではほんとうはこうした頭の良い出鱈目を言う立ち回りは凄く尊敬されるような気がします。

西洋ではコンゲームというのがありますね。日本ではそれほど人気がないように思えますが私は大好きです。

ルパン三世』はそうしたカテゴリだったはずですがあまりそういう感じで観られていない気がします。

最近大ヒットした韓国映画『パラサイト』は日本では社会の格差問題の映画、という認識で宣伝されていましたがあれは本来は「痛快なコンゲーム」として宣伝されるものではないでしょうか。

最高の詐欺映画です。

 

ネタバレになってしまうかもですが最近見たドラマ『スパイの妻』も素晴らしいコンゲームでした。

 

『月に咲く花の如く』その2

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観始めてすぐとんでもない事件が発生しどうなるかと気をもんでいったん収まったのでもうここらで観終わってもいいかな、ちょっと退屈になってきたかもと思いつつ少し先に進ませたらまたもや意外な展開が始まりました。

これが面白ドラマの手口というやつか。

 

 

 

以下ネタバレですのでご注意を。

 

エピソード10まで。

養父と旅をしながら詐欺的パフォーマンスで稼いできた周榮はその養父に下女として売り沈家に飛ばされてしまう。

その家の馬鹿坊ちゃん沈星移

最初のエピソードはこの殺人事件でさすがにどうなるんだ?と気になり観続けてしまいます。

結局犯人はよくわからぬままですがとにかく沈家が呉家に強い恨みを抱く、という布石が打たれます。

また呉聘は胡咏梅という良家の女性との婚約があったのですが呉聘が暴漢に襲われ昏倒してしまうという事件も起き杜明礼という怪しい男の口車に乗せられ胡咏梅の父親は結婚を破談してしまうのです。

婚儀が行われれば呉聘は目を覚ますだろうという占いを信じる呉家の人々はこの事態に驚き嘆くばかり。いたたまれなくなった周瑩は「私が結婚する」と言い放つ。そして占いは実現し呉聘は目を覚ます。

 

様々な布石が打たれまくっています。

これらがどう回収されていくのかやはり気になります。

 

さらに富裕と貧困の問題、西洋人への偏見、女性の立場などいろんな問題がてんこ盛りです。

昔のドラマはこうした問題を引きずりまくっていましたが現在のドラマはすぐに解決していく傾向があるのでそのあたりのストレスはかなり軽減されています。

 

呉聘を演じるピーター・ホーはとにかく体格がよくて見惚れます。表情も穏やかで若旦那の良い見本です。

 

インテリアは伝統的でありながら華やかになるようデザインが考えられていてこれも眼福です。

 

 

 

『月に咲く花の如く』

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アマゾンプライムとうとう観たいものがなくなって(というか見つけられなくて)困ったことに。ドラマは敬遠したい私ですがとりあえずいくつか試し見していたのですがやはりぴんと来ない。

そんな中で出だしから面白く思えたのがこのドラマ『月に咲く花の如く』でした。

 

清朝末期の激動の時代。一人の女性が波乱の活躍をする話のようですw

確かにヒロイン周榮は初っ端から怖いもの知らずの立ち回りで破天荒で目が離せません。

物凄く観る気になったのですがとりあえず何話まであるか確かめたら74話まである。

どひゃです。

これだからドラマは・・と後悔するには遅すぎたようです。

仕方ない・・・。途中で飽きてしまうかどうか。アマプラ契約は延長しなきゃいけないようです。

 

中国ドラマは久しぶりで楽しいですし清朝はやはり興味深い。

初めて観る人には辮髪は難があるかもしれませんが私はすでに辮髪は免疫があるのでダイジョブです。

インテリアといい人々の立ち居振る舞いといい観ていて楽しいのですよね。

先日知った秋瑾とも重なるのかなと思いますがどうでしょうか。

秋瑾は1875年生まれ。

周榮は1868年生まれ。

 

とにかく周榮、下品で面白いです。おかしいなあ。

これははまりそうです。

『アニメーションの女王たち』ナサリア・ホルト

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ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語

 

というキャプションが本書を説明しています。

 

1934年にビアンカという女性がウォルト・ディズニーに手紙を送ります。その後の面接でウォルトは彼女の才能を認めビアンカはディズニースタジオシナリオ部門の初の女性スタッフとなるのです。

仕上げ部門には女性が大勢いるのですが作品の基盤となるストーリー会議には男性のみしか入れなかったと本書には記されています。

その突破口となったのがビアンカマージョリーでした。

が、男性のみの職場は一人の女性にとっては過酷なものでした。続く女性アーティストたちもまた性差による苦難を思い知らされていくことになります。

 

本書に書かれている内容はどの国でもまたどの職種でもその程度の差はあれこれまでそして現在でも女性たちの苦悩であるのでしょう。もちろん男性にとっても苦悩であると思われます。

 

ディズニーは『アナと雪の女王』という女性監督による名作であり大ヒット作を生み出しましたが日本ではアニメでも実写でも映画監督で突出した女性は現れていないと言っていいでしょう。

とはいえ小説家やマンガ家では日本でも優れた女性ヒットメーカーは数多くいるのですからアニメ監督の名前に女性名が並ぶのもそう遠くはないと期待します。

 

ナサリア・ホルト氏による本書は実をいうと私には非常にわかりにくいものでした。

長いディズニースタジオの歴史を一冊にまとめるのは難しいものであるでしょうし翻訳の影響もあるとはいえ散漫な印象を感じました。

 

本書を読んでよかったと思ったのはイラストレーターのギョウ・フジカワ氏を知れたことでした。

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日系アメリカ人女性ギョウ・フジカワ氏の名前を私はまったく知りませんでした。

彼女のイラストは上のものでもわかるとおり多様性を訴えたものであったと本書にも書かれています。

当時のアメリカの児童書は白人向けのものがほとんどで有色人種を描くことにクレームが入ったと言います。

しかし彼女はこれに屈せず様々な人種の子供たちを同じ世界に描いています。上の絵を見てわかるとおり皮膚や髪の色合いは違えどその顔立ちには大きな差をつけていません。こうした配慮に彼女の人格を思わせます。

 

本書でウォルトがビアンカの描いたイラストボードを破り捨て「女はすぐ泣くから困る」と吐き捨てる冷酷な場面が出てきて驚かされますが、戦時中の日系のギョウ・フジカワ氏に対しては「心配していました。あなたはアメリカ人ですよ」といたわる言葉があり日本人としては嬉しく感じました。

両親とも日本人の移民だった彼女はそれまでは日本人でないふりをしたり中国・韓国の混血であると言い逃れていたといいます。

ウォルトのこの言葉を聞いてギョウ・フジカワ氏は「私はアメリカ人です」とだけ言うようになったのだそうです。

ギョウさん自身はニューヨークにいたため無事だったそうですが、両親はアーカンソーの収容所に送られてしまうのです。

彼女はスパイと間違われてしまう危険も顧みず中国系のファッションと偽名を使って両親に会いにいったりする勇敢な女性でもありました。

ギョウさんの映画を作って欲しい、と思ってしまいます。

 

ギョウ・フジカワ氏はイラストレーターでディズニースタジオにどれほど関係していたのか、まだよくわかっていませんが彼女の存在を知っただけでもこの本を読む価値はありました。

 

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ドラマ「スパイの妻」

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映画だと思って観始めました。映画にしては(しかも黒沢清の)軽い映像だなあと思いながら。やはり映画とテレビドラマは何か違いますよね。

しばらくして「ん?やっぱり違うのか?」と思ったらなんとテレビドラマ版があったのですね。

ずいぶん早いテレビ放送だなあ、とは思ったのですよ。

 

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

 

話によると映画版もテレビ版もそんなに違わないそうです。

それも知ってよかったのかどうなのでしょうか。

 

 

それはそれとして、とても面白い作品でした。

久しぶりに日本映画でよく練られた考えられた脚本を感じました。

 

主体となっている「スパイ」の物語が薄く軽いのはもちろんこの映画が「スパイ活動」の映画なのではなく「スパイとその妻」の関係性を描いた作品だからですね。

優作がなぜスパイになったのか、聡子がなぜ愛国者から変化したのかということではなくふたりの関係性がとても重要なのです。

 

登場人物の名前もおもしろい。

聡子=理解・判断が的確で早い。感覚が鋭い。敏感。

優作=優しさを作っている。みせかけですね。

津森泰治=安泰に治めているつもり。なんとだじゃれ。

 

 

自作の映画を上映した優作が「お粗末!」と言い

その映画をのちに観た聡子が「お見事!」という掛け合いは何とも言えません。恥ずかしいような笑えるような泣けるような。

 

きっと何かにつけこの作品を思い出してはこうなのではないかと考えていく気がします。

 

映画版も楽しみです。

『ソーイング・ビー』シリーズ3

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シリーズ3まで観終わりました。

とても楽しい時間でした。

丁寧に作られた衣服のすばらしさ。

 

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

前二回とはまた違う面々違う展開なので人選には非常に気を使っていると思われます。

年配者が多くなるのが日本の番組とは違ったところですね。

 

勝戦、「日本の型紙」を理解できなかったローナにやり方を教えるマットとニール。特に先に教えたマットのやさしさにほろりとしました。

いいなあ、こういうの。

そのマットがなんと優勝という感激の結果でした。

奥さん娘さんにも優しくて良い感じなのですがもちろんアイディアと技術が素晴らしかった。

アマプラではシリーズ3までなのですがまた次が楽しみです。

人は何のために生きるのか

以前何の番組だったかも忘れてしまったのですがテレビ放送で(たぶんNHK?)

 

「人はなぜ生きるのか」「なんのために生きるのか」

 

という問いかけをしているものがありました。

尋ねられたのはふたりの小学生くらいの兄弟でした。お兄ちゃんのほうは「そんなことわかるわけないよ」と笑っていたように思いますが、弟君は真剣にしばらく考えていました。

 

「・・・自分が知ったことを誰かに伝えるために生きているのじゃないかな」

 

失礼ながらちょっととぼけた味わいのある顔立ちの男の子だったのでその答えに驚きました。

お兄ちゃんもそれから問いかけた人もちょっと驚いていたように感じました。

 

むろんテレビ番組なのでどういう仕掛けがあったのかなどはわからないものですがそれでもその男の子の真剣な表情と答えにはっとしたのでした。

 

「人はなぜ生きるのか」「何のために生きるのか」という問いかけとその答えは今までも様々な人々から聞いてきました。

でもこの男の子の答えはそのどれよりもしっくりと腑に落ちました。

人間は自分が知ったこと・考えたことを他人に伝え教えそうやってずっと受け継いできたのです。子孫に家業や財産を受け渡すこともその一つです。

そしてまた師が弟子に受け継がせていくのも親が子に友が友に何かを伝えるのもまたそうなのです。

 

録画していたわけでもなく記憶が薄れてしまいそうなのでここに書いておくことにしました。すでに少し変化させてしまったかもしれません。

 

ところでその折「ウザイおせっかい教え魔が日本には多すぎる」と書かれた記事を見つけました。

これはこれは。

この少年の答えが真理であれば「おせっかい教え魔」は人間として当然のことになりますね。本能がそれをさせるのです。

それが「何のために生きるのか」なのですから。