ガエル記

散策

『史記列伝/下』横山光輝

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

第6話「野心家寧成」

前回の郅都のさらに上を行く恐ろしい酷吏・寧成の物語である。

郅都はただひたすら生真面目で恐ろしかったが寧成に至っては恐怖を与えることを自覚しているのだがそのせいもあってか早めに捕まり投獄され死刑を求刑されるのだがなんとここから投獄して生き延び金もないのに後払いと言う条件で田地を買い込んで億万長者になってしまう。おまけに恩赦が出て死刑が取り消しとなり地方の有力者になってしまうのだが新しい太守が彼を調べ始めたと聞いて逃げ出した、その行方は誰も知らない、と言う終わり方。

なんかよくわからないけど凄い男の人生だった。

 

第7・8話「冬の月 前編・後編」

王温舒の物語。

最初は犯罪の取り調べが役目だった王温舒は次第に出世し御史(検察官)になり長安の盗賊を一掃せよと命じられる。

そのやり方は徹底しており強圧的に人を狩っていった。殺傷した数は万を越えた。

更に都尉(警備隊長)になると命知らずの前科者を集め官吏として取り立てた。彼らは王温舒の爪や牙となって働いた。

盗賊や反徒や悪徳豪族を調べ上げこれらも徹底的に処罰していったのだ。

王温舒が任地すればたちどころに犯罪者はあぶりだされ死刑になっていく。その一方で権勢の座にある者には奉仕に勤めうまく取り入った。

しかしある時王温舒の悪事を訴える者が現れ皇帝の知るところとなり王温舒は自決した。その罪は一族だけでなくふたりの弟と妻の一族にも及んだのだ。

 

老子は言った。

法律禁令が完備するほど盗賊は樊とは増えてくる」

 

最終話「酷吏時代」

ううう。タイトルからして読むのが辛そうである。

事実、法律を厳しくすればするほどかえって朝廷の統治力を削ぐ結果となっていった、という話である。

 

さてこの『史記列伝』上下にて横山光輝氏は大きく遊侠の徒の魅力と厳しい法律の残酷さと馬鹿々々しさを繰り返し描いている。

自由にしかし義理堅く生きる男のすばらしさと「法律こそが正義」という理念に取りつかれた男たちの醜さを描き分けている。