ガエル記

散策

『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝 その2「城と太陽と名探偵」

さて『横山光輝超絶レアコレクション』の三作目は「城と太陽と名探偵」です。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

「城と太陽と名探偵」原作:梶原一騎/高一時代1970年8月号」

解説でみなもと太郎氏が語られるに「本書の中ではこれが珍品中の珍品」

原作が梶原一騎横山光輝漫画というのは他にないものなのですね。確かにイメージできません。横山氏は描く主人公に明確なこだわりがあるからなあ。

そして本当にこのマンガに登場する男子は他ではあまり見られない感じです。

さらに驚きなのは表紙を見るとわかるのですが「東芝ICアクセス」という新商品のPRを兼ねたものになっていて本作出版のために編集部が東芝に許可を願い出たところ「二大巨匠に宣伝をしていただいていたとは大変な名誉です」と答えが来たそうです。つまりそんなマンガがあったのを当の東芝さんが知らなかったのですねw

 

で、内容は、三沢圭子という美少女が学校に件の「東芝ICアクセス」を「誕生日にもらった」と言って持ってくる。ラジオとテープレコーダーが一緒になっている画期的なアイテムなのだ。

「一曲流せよ。ゴーゴーといこう」ということでクラスは盛り上がるが先生がやってきて大慌てで静まる。藤永先生は色白の文学青年で女子に絶大な人気があるのを男子はひがんでいる様子だ。

藤永先生は教室に入ってくるなり「この教室に僕にラブレターをよこしたものがいる」と言ってその手紙を読み上げる。熱烈な恋心を訴えたもので「先生が夏休みに信州に戻られるので私もそこへ行きます。松本城の月見櫓でふたりきりでお会いしたい」と求めていた。

生徒たちがガヤガヤと話す中で吉本君が手をあげ「松本城について知りたいんですが」と的外れな質問をする。先生は呆れるがまあいいと言ってなぜか三沢圭子に「説明してやれ」と言う。圭子は流暢に松本城の説明をする。彼女は祖父母が松本市にいて毎年夏休みに行くのでガイドの案内を暗記しているというのだ。

藤永先生は圭子を職員室へ呼んで忠告をする。先生はラブレターの犯人を圭子と思っているのだ。しかし圭子は違うと答えた。

 

二枚目の藤永先生と明朗な美少女圭子は横山マンガでもよく見るキャラだが三番目の主要人物(というか主人公なのか)の吉本君がいないタイプ。

メガネキャラで実はラブレターの犯人は吉本君だったというオチ。

とってももちろん彼は圭子が好きなのだがハンサムな藤永先生と圭子が夏休みに同じ松本市に行くのを邪推し、圭子が行けなくなるように仕向けたのだ。

が強気な圭子は「行かなければよけいに噂される」と松本行きを曲げず中学時代からの知り合いである吉本君を祖父宅に誘ったのである。

謎解きに新製品の東芝ICアクセスが一役買う、という仕掛けもあってなかなか面白い作品となっていました。

梶原原作がそうなっているだけかもしれませんが企みがばれたのを吉本君がはきはきと弁明し藤永先生に「男らしく詫びるよ」というのはさすが横山流。メガネ君もいじいじしていません。

とはいえやはり珍しいキャラ設定だと思ってしまう。今後読んで行ったらめぐり合うかな。

色々な面で非常に貴重な作品でした。