ガエル記

散策

『バビル2世』横山光輝 ⑫

最終巻です。

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

理由は不明だが続けて男たちが「おねがいだ。助けてくれ。俺の言うことを聞いてくれ」と訴えながら自分で自分を撃ち抜く、市街で高速で車を走らせぶつかって死んでしまう、という出来事が描かれる。

 

バビル2世は保安庁の局長からの新聞広告(暗号)を見て訪れる。

数か月にわたって異様な自殺者が増えているというのだ。

調査によると自殺者の共通点は皆同じ日に事故などで片足や片腕をなくして同じ病院で手足の移植手術を受けたという。その日自分の体を切り刻んで不幸な人たちのために使ってくれという死体の提供者があったのだ。

その死体提供者の写真を見るとその顔はヨミの死体だったのだ。

 

まだひとりだけ左足を移植してもらった男だけは生きているという。しかしその男の状態も以前とはすっかり変わってしまったらしいのだ。

 

ここで局長は伊賀野を呼ぶ。

こんな嬉しそうな伊賀野さんを見るとこちらも嬉しくなるね。

 

しかししょっぱなから乗り込もうとした車にダイナマイトが仕掛けられておりバビル2世の能力がなければ死んでいた。

 

そしてさらに後ろからつけてきているダンプの運転手の考えを読もうとしてもなにも考えていない、と感じたバビル2世は踏切で停止した際、伊賀野氏を車から突き飛ばして追い出し自分も飛び出した。

その直後ダンプはふたりが乗っていた車を直撃し運転手は死んだ。

 

その頃たったひとりの生存者もまた何かに怯えながら飛び降り自殺をしてしまった。ふたりは間に合わなかったのだ。

ふたりは最後の自殺者の家族から彼の日記を預かりバビル2世はホテルに宿泊してそれを読むことにした。

保安庁へ報告に行こうとした伊賀野氏は途中で自殺者の手術をしたという医師に出会う。彼は伊賀野氏に自分の研究所で見せたいものがあると言って同行させた。

彼の研究所に着いた伊賀野は奇妙な光を見せられ暗示をかけられてしまう。

バビル2世に会ったら拳銃を抜いて一発を残して全部撃ち抜き最後の一発で自殺しろと命じられる。

 

最後の自殺者の日記を読んでいたバビル2世のホテルの部屋へ伊賀野は行きその顔を見ると拳銃を抜いて指示通りに撃った。

が、バビル2世はとっさに天井へ張り付き事なきを得たが最後の弾で伊賀野氏が自殺しようとするのを見てその手を蹴り飛ばした。

床に倒れたショックで伊賀野氏は正気を取り戻したが何も覚えていない。

 

次の日バビル2世はもう一度自殺者の妹さんに会って詳しく話を聞く。その話によると火葬している遺体から手術を受けた足がなくなっているのが見えた、というのだった。

 

その後伊賀野の調査で他の自殺者も死後移植した部分がなくなっていたというのだ。

 

これはいったいどういうことなのか。

移植を受けた人々が全員自殺してその後その部分が消えたというのである。

 

バビル2世と伊賀野氏は移植手術をした病院へ急いだ。そしてその移植手術の補佐をした医師を見つけ彼がその後再び別の体に移植手術をしたと認めた。その移植患者は地下の部屋にいるという。

ふたりが駆け付けるとそこには前進を包帯で巻いた人間がいたのだ。

 

バビル2世がその包帯を解いて素顔を見ようとした時、ある男たちが伊賀野氏に拳銃を突き付けてその行為をやめさせ包帯の男を救急車で連れ出してしまった。伊賀野氏は人質として連れ去られてしまう。

 

が男たちは伊賀野氏を放免し救急車ごとヘリコプターで吊り上げ運ぼうとした。その矢先、追いかけてきたバビル2世はそのヘリコプターにぶら下がり共に海上へと飛んで行ったのだ。

 

救急車の中の包帯男はテレパシーでバビル2世の居場所を感知し銃を撃って彼を海に落とした。

バビル2世はポセイドンを呼びさらに追跡する。

 

包帯男を運んだヘリコプターは船に降りて進んでいた。

バビル2世はその船を見つけ近づく。船員たちもそれに気づき騒ぎとなった。

包帯男はテレパシーでバビル2世とポセイドンだと気づく。

 

包帯男は影武者を使いバビル2世を騙し自分はヘリコプターで逃げ出し船を爆破した。

 

バビル2世は日本に戻り伊賀野氏と会う。

なんだかほっこりする穏やかな光景だ。

 

バベルの塔へ帰ったバビル2世はコンピューターからアメリ原子力潜水艦ネバダ号が北極海で行方不明となっていると伝えられる。その艦には水爆ミサイルが積載されていた。

 

バビル2世はロプロスに乗って北極へと向かう。

そこではアメリカ軍の船が行方不明の潜水艦を探していた。一隊が上陸し不思議な要塞を見つけそこから発せられた怪しい光で催眠術をかけられ互いを撃って死んでしまう。

待っていた船もまた氷山に押しつぶされてしまったのだった。

 

果たして。

包帯男はヨミであり北極に作られた要塞はヨミが作り上げたものだった。

要塞はまるでバベルの塔のように吹雪に守られ近づく者を催眠術の光で惑わせるのだ。バビル2世は写真を撮りバベルの塔に持ち帰って調べることにした。それに気づいたヨミは水爆ミサイルの発射を命じる。

するとロプロスはバビル2世を振り落として逃げ去る。

自分だけが水爆ミサイルで爆破されバビル2世を救ったのだ。

 

バビル2世はポセイドンと共に再び北極へ向かった。ポセイドンは要塞を見つけバビル2世に知らせる。

ヨミを倒すため侵入を試みるバビル2世。

だが手術後まもないヨミは体力が続かず部下の勧めで休息を取った。

しかしその間にバビル2世はポセイドンを使って攻撃し部下たちは確認しようと1分ほどだけ扉を開ける。

 

その報告をうけたヨミは怒り部下を処罰する。

バビル2世なら1分あれば中に入ることができる。ヨミは恐れおののいた。

 

バビル2世は要塞のエアコンを破壊した。室内温度は下がりヨミ以外の部下たちは寒さで身動きができなくなる。

バビル2世はポセイドンを使い要塞を破壊していく。

それをヨミが止めた。

バビル2世が決着をつけようとしたがヨミは「今は年老いて昔の力も出ぬ。今更戦ったところで結果はわかっている」と告げた。

そしてこれ以上の破壊をすれば原子炉が爆発し北極の氷が解け地球が大洪水となる。しかしわしは地球を支配しようと思ったが地球を滅ぼそうとは思っていない。

「だからこれ以上破壊せずおとなしくひきあげてくれ」と頼むのだった。

「こうなればこの北極で誰にも邪魔されず永遠に眠りたい」

バビル2世はポセイドンと共に引き揚げた。

 

完結。

 

包帯男となってもまた蘇る。曹操もそういう男でありましたがヨミは本当にずたずたになった体で動き続けた。

北極で死んでいく移植された男、という設定はフランケンシュタインの怪物を倣ったものでしょう。

そうした設定をきっちり作画できるというのは凄い才能ではないでしょうか。

かつては部下を慈しんでいたヨミもそれは自分の能力が高かったからなのでしょう。

能力の落ちたヨミは部下の失態が許せなくなった器量の小さな男になってしまった。自分の力でそれがカバーできないのだ。

やはりここでもバビル2世よりもヨミの悲壮感が心に迫る。