ガエル記

散策

『カムイ外伝』白土三平 第二部/心旅/乱心法獣遁

この表紙は非常にカムイらしくていいなあ。

脚の描き方よ。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

「心旅」

ご禁制の品を秘して運ぶ裏街道があった。

普通の旅人が通ることのない山道には飢えた狼が現れる。

その狼たちの怒りを鎮めるために生贄となる者が必要だった。

 

旅を続けるカムイは人前で半裸になって見世物になっている少女が男たちに襲われるのを助ける。

何故と問うカムイに少女は「自分が誰かわからない。それを探している」という。自分でつけた名前は「アキ」だという。

自分の明日を得る為に昔をたずねる心旅か、とカムイは考える。いわゆる自分探しの旅なのだろう。

カムイはアキの目印になるものを凧に描いてあげれば誰かの目につくかもしれない、と助言しアキはその通りにする。

 

アキと親しくなったカムイは裏街道を行く運送の仕事を命じられる。そしてアキは上げた凧を目にして心当たりがあると言われ同じ道を行くことになったのだ。アキはカムイに感謝した。

 

この旅は仕掛けられたものである。

カムイは獣への生贄として同行させられたのだ。

そしてアキの「昔」は売春婦だった。アキが凧に描いた目印は売春宿の印だったのだ。

 

それから一か月後裏街道の旅は終わった。

アキは元の店に戻された。

そこにカムイが到着しカムイを食うはずだった狼の首を放り投げ金を要求した。

 

カムイはここで老ヤクザにその金を託してアキを救い出してもらう。

アキが自由になった時にはカムイはすでに旅立った後だった。

 

 

「乱心法獣遁」

最も心に残る(こればっか)カムイと熊・三本指のエピソードである。

 

今現在も国を騒がせている熊の被害。

特に三本指と呼ばれ山道を行く人々を怖れさせた熊を退治しようとする狩人たち。

カムイは同じく追われる者として三本指の危機を見逃せなかった。

狩人たちに追い詰められていた熊を捕縛し薬草採りに身をやつして誤魔化した。

 

カムイに救けられた三本指はカムイが行う魚取りを助けるのではなく邪魔をするww

蜂の巣を狙っていたカムイの先回りをして美味しい蜂蜜を食べてしまうのをカムイは拗ねた目で見つめるしかなかったwww

(このカムイがカムイ史上最高にかわいい)

 

カムイはこうして山で獲ったものを町で売り良い評判を得ていた。

だが傷を負った猪を狙おうとしたカムイは仕掛けられていた刃物を太腿に受け歩けなくなってしまう。

洞穴に横たわるカムイを見た三本指は木の実や獣を獲って運んで来るのだった。

 

がここにカムイを狙う追手が近づいてきた。

以前三本指を追い詰めた狩人を雇い山を案内させたのだ。

追手はカムイに毒水を飲ませることに成功する。

ここで追手は追撃すべきだったがカムイの実力を知っていたこと、刃物による傷を受けたとは知らなかったゆえの躊躇いが追手の動きを鈍らせた。

カムイは嘔吐し解毒を試み逃亡を図る。

さらに三本指が追手に襲いかかった。

そのために三本指は致命傷を受けた。

それゆえにカムイは追手を倒し逃げ延びたのだ。

 

だがそのカムイもまた重傷を負い雪の中に倒れた。

 

すると死んだかに思われた三本指が立ち上がり何を探すように雪中を移動し再びそこで倒れたのだった。

 

 

この物語は三本指がカムイを救ったのか、それとも忍びであるカムイが獣を使って敵から逃げる術を使ったのかわからない、と書かれている。

獣を使って逃げる術を乱心法獣遁という。

参考文献戸川幸男著『マタギ狩人の記録』とある。