これってジョーカー女性版?という言い方は釣りですが。
とても面白く鑑賞しました。こんなに優れた映画作品が日本では劇場未公開です。そういうことですね。
苦くて甘くて眉をしかめつつもくすりと笑ってしまう、そんな映画でした。そういうのは凄い映画じゃないでしょうか。
ベストセラーを出したこともある女性作家が作品を書けず落ちぶれていく物語です。
映画ではこうした設定の女性作家は大概痩せすぎでシンプルな服装というような人物像がほとんどですが本作のヒロインはかなりの太めで愛想なしで自分勝手、という描写です。
アパートの自室は蠅が多くて困ると大家に文句を言うが実は彼女がまったく掃除をしない為部屋は物凄く悪臭で満ちていて害虫駆除業者が逃げ帰るほど。
しぶしぶ掃除を始める彼女を手伝ってくれるのはたった一人の男友達でした。
実在した作家であるヒロインの名はリー・イスラエル。彼女自身はレスビアンですが本作中では恋人はおらず、男友達はゲイでエイズ患者でもあります。
舞台が1990年でリーの使うパソコンが時代を教えてくれます。友人ジャックの仲間は皆エイズで亡くなってしまったというのも時代を感じさせます。
リーのエージェントはアドバイスします。
「身綺麗にして言葉遣いをあらためなさい」と。
そしてエージェントの言う通りサイン会やラジオ番組に出演すれば作家になれる、と。
なるほど、と思います。アメリカでも日本でも作家の若さや容姿は売れるために大切な要素なのでしょうし、自分を売り込みたいという意志もないまま報酬があるというような都合の良い現実はないわけです。
映画の中では特に女性作家は美女でなければならなかったし少なくとも共感され同情される人間性を持っていなければならなかった、男性たちが製作していればなおさらです。
本作では主だった製作者が女性です。
映画に登場する女性たちはこれまで「絶対必要」とされてきた集客のための美女や可愛い女子やセクシーガールやエロチック場面はありません。
もしくはイケメンや美形BL絡みシーンもありません。
出てくるのは50歳以上の美形とまでは言えない男女だけですが、それでも素晴らしい映画です。
さて私たちはなにを考えねばならないのでしょうか。