ガエル記

散策

『三国志』横山光輝 第二十三巻

もうなんと言っていいやら。表紙絵張飛登場回6・5回目。義兄の関羽が前回でやっと2・5回目ですからその差は歴然。横山先生の『三国志』のイメージは張飛なんですかねえ。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

這う這うの体で戻る曹仁軍を待ち構えていたのが張飛であった。疲弊しきった曹仁軍は張飛隊にここでも辛酸をなめさせられる。深追いはせず張飛は皆が待つ船へともどった。

良いね張飛。横山先生が好きになるはずね。

 

曹操は怒り狂う。またもや十万の兵を失ってしまったのだ。すぐさま全軍出陣を号するがひとりの将軍の提言によって徐庶を使者に建て玄徳に降伏を求める算段へと移行した。

これを命じられた徐庶は辛い立場だった。

徐庶の心はいまだ玄徳にあった。

がすでに恩を受けてしまったため曹操の命令には背けない。

徐庶は「それがしを使者にたてたのは心にもないあわれみ深さを見せ民衆の信望を買おうとするためでござる」と玄徳に伝える。そして「くじけずに曹操の野望を砕いてくださいませ」と言い残して去るのだった。

 

ううん。徐庶ほんとにこのまま残った方がよかったのでは。そもそも母上は玄徳に仕えて欲しかったと言ってたわけだし?

恩義って面倒だなあ。

 

さて降伏を断った玄徳軍は襄陽城へと移動する。この時孔明は「玄徳様を慕いついてきた民百姓は連れていくべきでしょう」と提言する。

関羽がこれを伝えると皆がこれに従った。

 

しかし襄陽城では蔡瑁が玄徳軍を攻撃し入城を許さなかった。がこれを非難する将軍もまた存在し城内で激しい仲間割れが起きる。

これにあきれた孔明は玄徳に江陵の城へ向かわせた。

これを見た襄陽城の兵たちには玄徳に付き従うものが続出した。

 

女子供も混じる民の行進は遅々として進まない。

関羽は先に我々だけ江陵へ向かうことを提案するが

やっぱり関羽は玄徳のこういう心が好きなんだよな。(面倒だけど)

そして私はここですかさずアイディアを持ち出す孔明が好き。

確かに民を大切にしなきゃだけど生き延びる作戦はたてなきゃね。

 

曹操蔡瑁のいる襄陽城へと乗り込んだ。

丁重に曹操軍を迎え入れる蔡瑁と幼い新国王。

蔡瑁曹操から水軍を任され平伏する。幼い国王は青州へ向かわされるがこれは口実で実際は途中で暗殺されてしまう運命だった。

曹操の冷酷さが現れる。

曹操軍は水軍の法を知らない。それを学ぶために蔡瑁を祭り上げたのだ。しかし幼い国王に曹操は興味はない。

利用できる蔡瑁は利用し利用できぬ者は消す。

曹操様、お疲れ様です。頭を使ってるから甘いものもおすすめですね。

 

玄徳一行の歩みはあまりにも遅かった。

先に行った関羽も音沙汰がない。

玄徳は孔明を追いかけさせ援軍の到着を待つしかなかった。

 

疲れ果てた玄徳一行が休む夜曹操から差し向けられた一軍が追いつく。

張飛に守られ逃げる玄徳の前に「趙雲が裏切り曹操軍に降りた」という知らせが届く。

趙雲は玄徳の妻子を守る役目を仰せつかっていた。その妻子の行方も知れない。

動揺する玄徳に張飛が追いつき事の次第を聞く。

張飛はそのまま趙雲を探すため走り出した。

 

むろん趙雲は裏切ったのではなく見失った玄徳妻子を探し回っていたのだった。途中で遭遇した夏侯恩(夏侯惇の弟ですと。信じられないほどの優男)を刺殺するがその男は見事な剣・青虹の剣を持っていた。

夏侯恩は曹操のお気に入りでその名剣を与えられたのだという。

趙雲は名剣を携えると再び捜索へと走った。

玄徳夫人は傷を負い我が子を抱きかかえ民家の側で動けなくなっていた。

奥方を助けるため馬を引いてきた趙雲の眼前で彼女は井戸に身を投げ死んでしまう。

嘆く間もない趙雲は幼子を我が胸に括り付けると馬を走らせる。

追手を倒しながら趙雲は逃げる。

奪い取ったばかりの青虹の剣も趙雲らを守った。

その趙雲の逃げ足を認めたのが曹操だった。またもや曹操趙雲が欲しくなり部下に生け捕りを命じるがこれは無理な問題だった。

無傷で趙雲を捕えるなどできるはずもない。

結局趙雲曹操軍の囲みを突破し待ち構えた張飛と出会う。趙雲の裏切りを怒っていた張飛も彼の胸に抱かれる幼子を見て曹操軍から彼を守った。

 

幼子を抱えて戻った趙雲を玄徳は迎えた。

この場面。

 

私はそれほどはっきりと知っているわけじゃないんですが他の様々な作品で玄徳は趙雲が命懸けで守った息子・阿斗を放り出した。という描写だったのではないかと記憶しています。

息子よりも忠臣を思いやる、と言う演出なのでしょうがいくら何でも赤ん坊を「放り投げる」というのはちょっと、と言う気持ちでした。

横山光輝氏はやはりそこは受け入れられなかったのでしょうね。傍らの兵士に阿斗をまあ「放り投げるように」渡し

というたぶん原作どおりの発言をしたうえで

だよね。せっかく趙雲が命懸けで(しかも夫人はマジで命捨てて)守った阿斗を放り捨てるのは余計思いやりに欠けるだろう。

 

というかそれならそもそもかつて関羽が言っていたように妻を持ったりしない方がいいわけだし子供もまた然りだよね。

しかし女性を愛し子供を持つような人間味があるのが玄徳の良さ、だと思うのはやはり現代の感覚なのだろうか。

横山『三国志』では曹操はそのあたりの描写が皆無だものね。未亡人に入れ込んで失敗し忠臣を失って反省してからまったくない。

現実にはそうじゃなかったろうけど。

 

曹操軍の追撃に困窮する玄徳だが

この旗印くらい心強いのはないね。

なんか他のよりよけいぶるぶるして見えるのはなぜ

無事玄徳に合流した関羽は奥方の安否を気遣う。

そうだった。関羽もまた奥方をお守りして玄徳に届けたのだ。

しかし一方

そこへ劉琦の水軍が到着。

さらに孔明が水軍を引き連れ到着した。

やはり孔明、さすが孔明

 

さてここから呉が登場してくる。

呉の新国王は孫権

曹操の狙いは呉に定まった。

 

孔明は玄徳に繰り返し話した。

「天下三分の理想」を実現するには曹操と呉を争わせる。我が方は力をたくわえるのはそれからです。

玄徳ぽかんである。

しかしすぐさま孫権からの使者が訪れたという報がはいる。

これには張飛もあきれいったいどうしてわかったのかと尋ねる

「とみた」すごい

玄徳ぽかん、張飛ぽかん、趙雲はそのまま、である

さらに孔明、玄徳に何を聞かれても知らぬわからぬで通してくださいとレクチャー。心強い。

玄徳うまい。そしてここで孔明を呼ぶ。

おおっ。我々が最もイメージする孔明ファッションである。

と脅して

と言う運びになった。

孔明の思うつぼである。

「我が君」

頼りがいありすぎてうれしい。

孔明がすべてを動かしていく