ガエル記

散策

『兵馬地獄旅』二巻 横山光輝

いやあ楽しい地獄旅です。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

女との出会いは簡単にすまされてしまうが男との出会いは濃密に描かれる。

 

ヒロイン登場

なかなか見目麗しい。いや絶対女よりも丁寧に描いてるから。

 

驚いた表情の視線の先は・・・

しかし

えーと、これは隠喩とみていいのかな。

 

ヒロインは兵馬を我が家に招き入れる。

 

ある意味寝室

 

ここで兵馬はヒロインの名が後藤又兵衛だと知る。

又兵衛は飲む前に周囲に落ち葉を撒く。怪しいものが近づいてもわかるというのだ。

こんなに接触する場面を描くのも珍しいかも

 

兵馬は野盗から又兵衛を討ちとれば仕官できるという企てで近づいたのだが又兵衛の人となりを知るに惚れ込み逆に又兵衛を討ちとろうとする野盗たちを片付けていく。

酔って寝たはずの又兵衛も「ここまで手数をかけるつもりはない」と言い残りの野盗たちを片付けた。

かっこいいですなあ。

槍を描くのは手慣れたもの。

 

こうして兵馬は去っていった。

この後後藤又兵衛は大坂の役で徳川家康の心胆寒からしめる活躍をする。

 

兵馬は猿に追われ小屋に逃げ込むがその小屋を爆破され目が見えなくなってしまう。

 

むむ。

目が見えなくなって彷徨う。

しかも原因が爆破によるもの、というのがそのまま『カムイ外伝』なのは気になるところ。

さらにこの話『猿の伝蔵』というとおりで伝蔵という忍者が猿を使って兵馬を襲わせる。兵馬は目が見えないのでやむなく近づく猿を手当たり次第に斬り殺すしかない、という悲惨な話になっている。

人間が殺されるならまだしも猿がいいように扱われ殺されてしまうのは心が痛む。

前話の『又兵衛』が良い話だったのに対しかなり心しおれる一編だ。

 

 

表紙から裸体美女が現れまたもや美人局かと思いきやまあそのとおりなのだが今度は女の方が堕ちてしまって話が変な方向へとずれていく。

これはもう『カムイ』とはではなくよく見た場面だwww『タイムボカンシリーズ』というか時代劇でもありがちな。横山先生完全に遊んでる。

てかこの三代目半蔵、ほんとに力ないんだなあ。自覚してあきらめなよ。

しかもこの後色仕掛けにすっかりはまってしまうしな。

ふむ。

この色仕掛けで正就はまんまと楓と交わり妖斎をきっぱりと断れなくなってしまう上に正就との交わりでは楓は心を動かされない。

が、その後の兵馬とでは気持ちが兵馬になびいてしまうのだ。つまり女とのセックスでも正就は兵馬に負けてしまったということなのだ。

完全なる敗北ではないか。

ということは正就は男ではなかったと。

ぐうの音も出ないダメ押し。

 

女性が出てこない活躍しないと言われる横山マンガだが本編は非常に重要な役目だ。

 

色仕掛けで兵馬を殺すつもりが好きになってしまう楓は虚無僧に扮して兵馬を助ける。

本作でもめくらましをかけたつもりでかけられてしまう、という術が登場しあわやというところで兵馬は楓に救われる。

「兄の仇討か」と問う兵馬に楓は「あなた様を見守らせてください」と頼む。

兵馬は「早々に立ち去れ」というだけで女を殺しはしない。

本来兵馬は温厚な善人だったのだ。

楓が好きになったのもそういう人格を感じたからではないだろうか。