ガエル記

散策

女性アスリートの心と体

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「女性アスリートの教科書」須永美歌子著


半世紀以上生きて来たのに今頃になって気づくことがあります。というかそんなことばかりです。当たり前と言えば当たり前でもありますが。

 

とは言え本当にえっと驚くこともあるのです。

女性アスリートの話がそうでした。

私はまったくスポーツをしない女性のせいもあって女性アスリートが抱える悩みについてなど考えたことがなかったのです。といっても最近まで「女性アスリートに対しての誤った考え方」ばかりがまかり通っていたのですから私が運動選手であったとしても気づかなかったに違いありません。

「女性アスリートに対しての誤った考え方」と書きましたが私はまだやっとそういう考え方について気づいたばかりなので何がどう誤っているのかは判っていません。

いろいろなことを学びながら「女性の体や心理」についてこれから考えていきたいものです。

そしてそのことは女性の運動選手だけでなく一般の女性に関してもとても大切なことなのだと思います。

 

女性の運動選手はより運動能力を高めるためにダイエットをしている場合が多いと聞きます。例えばランナーなど速く走るためには少しでも体重が軽いほうがいいわけですね。他の運動選手も同じことが多いわけですが単純に食事制限をしてしまうと女性の場合無月経になってしまう。月経というのは正直言って面倒なものですしすぐに子供が欲しいというわけでもない女性にとっては無ければ楽ちんだとなってしまう。ましてや男性から指導を受けている場合などは特に月経に関しての正しい知識を教えてもらうことはないのだろうと推測されます。勿論女性の体や心理について勉強された男性指導者もいるでしょうし、女性だからといって正しい知識を持っているとは限らないわけですが。

私がえっと驚く話を聞いたのはまだそんな前の事ではなかったと思います。ある女性がスポーツに打ち込んでいたのですが頑張れば頑張るほど体の調子がおかしくなって

とうとうやめざるを得なくなった、今思うと食事療法が間違って生理が止まってしまっていたのだけど当時はそういう知識がまったくなかった。もしその知識さえあればスポーツを止めなくてもよかったはずなのに悔しい、とテレビで話していたのです。

その話はずっと記憶に残っていてそれから少しずつ女性アスリートについて知りたいと思い、情報も耳にするようになってきました。

先日「放送大学」で小笠原悦子教授の「女性アスリートの育成と支援、その課題」を観てますます女性アスリートについて学びたくなりました。

その中で教授は「女性は男性のミニチュア版ではありません」ということを話されていてなるほどと思いました。

今までの女性アスリートはどうしても男性のスポーツをそのまま受け入れ男性に比べ劣っているが少しでも男性に近づくように、というような考え方で進んできてしまったのではないでしょうか。

これは自分が好きな文学やマンガについて考えればとても納得がいきます。文学やマンガの世界も男性の世界であったわけですが、女性作家たちは「自分も男性に劣らない文学・マンガ創作をしたい」と頑張ってきたわけです。ところが女性には女性のやり方があってそれは男性とは違うわけです。男性のミニチュア版として創作するのではなく女性の創作をしていくべきなのですね。

文学・マンガはスポーツに比べるとやや早めにそういったことに気づき成長していったように思えます。

だけどもスポーツは文学よりもっと男性的と考えられてしまったせいもあるのかもしれません。女性には女性のスポーツの方法、そして体や心の育成法があるのではないでしょうか。

そしてこの考え方がより進歩できればそれは女性運動家だけの話ではなく女性全員に対して正しい心と体の育成法が学べていけるようになるはずです。

 

特に月経というのは男性にないものでしかも女性の心体に深く根差しているものです。それを「男と同じようになるため」に失くしてしまうのは女性の心体自体を殺してしまうことになるのでしょう。

私自身も若い時過激なダイエットをしてしまい無月経になった時期があります。その時「面倒なものがなくなった」と却って喜んでいた記憶があります。が、その時期が短かく回復したおかげで無事に2人の子供を持てましたがあのままおかしくなっていたらと今思うと怖くもなります。

スポーツをするにも月経はある意味やっかいなものでもあるでしょう。けど、女性である以上そのやっかいなものを上手くコントロールしながら生きていかねばならないのですね。

図書館で須永美歌子著「女性アスリートの教科書」を借りてきました。2018年発行で我が田舎図書館にはこれ以外に女性アスリート向けの本はなかったのです。

男性アスリート向けらしい本は数えきれないほどあるのですがたぶん女性アスリートも男性ミニチュア版としてそれらを読んできていたのではないでしょうか。

この本の前書きを読んでも上に述べたようなまだまだ女性アスリートへの指導はこれからだ、ということが書かれています。

女性が男性と同じようにスポーツに打ち込み始めてもう長い年月が経っているのにこうしたことが全く考えられてこなかった、という事実に驚きました。

「女性を捨てる」とか「女を越えろ」とかいうことではなく女性として心体を作っていくことが大切なのだということを今頃になって気づかされたように思います。

そしてそれはスポーツや文学だけでなく女性の生き方そのものに当てはまることなのです。