ガエル記

散策

日本の映画がダメすぎて存在忘れてた

邦画はダメになった、と言われて久しすぎる。

日本映画、というといまだに世界に冠たる我が国の雄、と言って黒澤明溝口健二小津安二郎と並べ出す。判るけど、自分も好きですけど今その名前が一番先というのはやはり悲しい。むしろもうその方々は殿堂入りにしてあえて名前を挙げる必要はない気がします。

長く生きてきた(こればっか)者として、映画もそれなりに眺めてきました。映画館で直接観た回数は少ないですがTV・DVDなどでの鑑賞はかなり多いほうではないかとも思っています。

特に黒澤は高校時代にテレビで観て怖ろしいほどの衝撃を受けました。なぜかその頃、私の意識としては黒澤監督を悪く言っている人たちがいたという記憶があるのですね。なんだったかよくわからないのですが「黒澤映画なんか」と言ってるテレビ人がいた記憶があるのです。で、知らない私は「へーそうなんだ」と思っていたのですが、テレビ放送で黒澤特集があって「七人の侍」「天国と地獄」「隠し砦の三悪人」「用心棒」などを立て続けに観たのでした。一度でやられました。変な噂など消え失せました(いったいなんだったのか?)日本の映画でしかも私としては知らない俳優ばかりでモノクロ映像でテレビでこんな迫力があり物語がおもしろく美しく興奮する映画作品がいくつもあるとは!日本映画、と言われて即座に黒澤の名を挙げるのは当然ではあります。

しかし黒澤映画全盛期はおおよそ1950年~60年代のものです。今から60年・70年前の作品でのみふんぞり返ることができるのはむしろ気恥ずかしいではありませんか。

溝口・小津・今村昌平増村保造市川崑野村芳太郎大島渚岡本喜八などなど、そして石井岳龍(聰亙のほうがしっくりくる)「狂い咲きサンダーロード」「ユメノ銀河」伊丹十三マルサの女森田芳光は「それから」が好きです。大好きな塚本晋也「野火」など多くの作品、三池崇史は玉石混交ですが、黒沢清なんといっても「CURE」橋口亮輔「ぐるりのこと」大森立嗣「ゲルマニウムの夜」など、好きな監督を書き並べてみました。

北野武は「キッズリターン」本多猪四郎ゴジラ青山真治「EUREKA」若松孝二「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」も記しておきたいですね。

日本の映画監督の紹介サイトを見て書きだしたのですが正直最近の監督になっていくほど好きな人がいなくなってしまったのは事実です。

 

なんだろう、大雑把ですが1900年代というところまでは「昔ほどではないけど日本映画監督も結構頑張ってる」と言えてたのが2000年代に入るとかなり辛い感じになってき始め2010年以降は無口になってしまうしかない状態になってしまった、ということでしょうか。

 

何故日本映画がつまらなくなったか。何故邦画は水準が低いのか。

昨日ツイッターでちょっと絶句したのがありました。テレビ番組で中尾彬氏が「韓国とは交流する意味がない、とか言う説があるけど映画などは学ぶべきところがある」と話されていた、というツイートが映像付きでありました。

ツイッターではこういうものにネトウヨからの嘲りや罵りが並ぶものですがリプをみてみると「オレはネトウヨだけど確かに邦画はレベルが低い」という書き込みがあって「おい!いつものネトウヨの勢いはどうした?」と逆に心配になるほどでした。「日本映画のほうが(韓国映画より)優れている」というリプは見当たらずネトウヨですら邦画のほうが負けているという自覚があるようでしょんぼりしている様子は痛々しいほどです。

他ではこんな反応が並ぶことはまずないのでそれほど日本映画の目に見える停滞・衰退・堕落した姿はネトウヨでさえも反撃できない状態なのです。

 

例えば去年(2018年)話題になった邦画はほぼアニメ映画。私はアニメ好きなのですがさすがに日本映画といってアニメがトップなのは情けないのではないでしょうか。

とは言え今黒澤に匹敵する現在の日本映画監督が宮崎駿なのは誰もが認めるところでしょう。(私は富野由悠季派ですが)

しかしあえてここでは実写映画で語りたいです。が、作品群を見ると今度は漫画原作映画があまりにも多い。マンガが原作であることがいけないわけではないのですがこの制作の意味が「人気漫画を原作にすれば自然とファンが観に来るから」ということでしかないからなのが問題なのです。

実写映画にどうしてもしたい、のではなく利益が見込めるからなのですね。なのでこれも省くとなると映画作品の数と質はますます落ちていきます。そしてテレビドラマの映画化も省くとなると果たして映画作品は存在するのでしょうか。

 

改めて2018年で最も話題になった映画は「万引き家族」だと思います。まだ見ていないのですがテーマ・予告編で観た映像などからも見るべき映画作品であることが判ります。

2018年映画興行成績で見ても3位までが上にあげたテレビドラマ&アニメなので純粋な

(?)映画では一位になります。変な感じですが。

さらに挙げていきたいのですが漫画原作も抜くとなったら8位に「カメラを止めるな!」9位が「検察側の罪人」で10位までには全う映画が3作品しかないのです。

さらに11位は定番《病気愛もの》「8年越しの花嫁」(実話ものでもある)15位が「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」監督はチェン・カイコー。中国監督ですが邦画(カドカワ出資のため)としてランクイン。チェン・カイコーは大好きです。

あとはもう挙げたくありません。とにかくアニメか漫画原作かTVドラマの映画化が上位も下位も占めていますし、他のもジャニーズとか若手人気女優主演というのが売りの映画ばかりなのであり本当に「ちゃんとした映画」といえるのは「万引き家族」「カメラを止めるな!」「KU-KAI」ぐらいしかないのです。

しかも一つはチェン・カイコーですし、これでは「日本映画はレベルが低いから・・・」とネトウヨが怖気づいてもしょうがないはずです。

さらに「カメ止め」は流行のゾンビものだったのが正直残念でした。インディーズが突然売れるのは喜ばしいことではありますが、他の映画があまりにもくだらなくレベルが低いためだったこともあるように思えます。

 

そして「万引き家族」は「国辱だ」と言う的外れな批判をする人々がいたこともまた残念です。こういう人が多い社会で良い映画など作れるはずもありません。

 

日本映画が何故つまらなくなってしまったか。

いろいろな要因があるでしょう。

韓国映画は国が後押ししていると聞きます。日本映画のように低予算でしか作れず、良い作品への尊敬も少なく、あまりにも作品のテーマが限られてしまう状態で才能や名誉だけを期待されても無理でしょう。

未見ですが「主戦場」のような作品が何故作れないのか、政治や思想、様々に蔓延る社会の暗黒を描く映画など望めるわけもない、と思ってしまうのは虚しいです。

計算された濃密な脚本による神経のはりつめた娯楽映画なども存在しません。

主演はいつも見る若い人気俳優に限られてそれらに対して「演技が上手いね」「有望だね」という評価をするだけ。

外国の映画を見慣れてしまった目には日本の俳優は男女ともあまりにも体が薄くて表情も演技も貧乏に見えてしまう。そしてそれを良しとしてしまう映画業界は良い俳優を見つけ育てようという理想はない。

まず第一ポスターからして外国のものと比較にならないのです。なぜか「日本人は美的感覚が繊細で優れている」と思い込んでいる方々がいますが韓国や中国のポスターを見てから言ってほしい。

すべてが置き去りにされてしまったのですよ。

自分たちにはなにもない、というところから始めないと無理なのです。

日本映画、という時に黒澤の名前を挙げる資格はもうないのでは。