ガエル記

散策

『メイド・イン・ホンコン/香港製造 』フルーツ・チャン/陳果

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サム・リーの筋張った細い体のなんと魅力的なことか。

それほど痩せ型の男が好きなわけではないのですが、初めて『メイド・イン・ホンコン』でサム・リーを観た時細い体の美しさを知った気がしました。

彼はフルーツ・チャン監督に見いだされ本作でデビューしたと書かれています。フルーツ・チャン監督自身がまだまだ駆け出しであり、初めて映画出演したサム・リーも作品もまとまり切れない若さに満ちている映画です。

返還される前の香港がこの映画にあると言います。

それもまた混沌とした力にあふれたものであったのでしょう。

映画の内容もめちゃくちゃな法則と暴力と愛情がごちゃ混ぜになっているのです。

 

わたしが初めて観た時、とは言ってもDVDでひとりひっそり観たのですが、その頃私はとにかく香港映画・中国映画にどっぷりはまりこんでいてフルーツ・チャンも大好きになった監督の一人です。

香港・中国映画(これに台湾も加えるべきですね)の魅力は他に代えがたいものがあります。

この『香港製造』はまさしくそれを凝縮したもの、と言っても差し支えないものです。

同じく大好きになったウォン・カーウァイ監督も素晴らしい映画を作りますが、その作り方はその場その場で台本を決めて渡す方式と知った時は驚きました。香港映画は(今はどうなのか判らないですが)そういうその場で作っていく方式が当たり前のようでだからこそあんな迷路のような不思議な映画が出来上がってしまうのかとも思います。

さまざまなものが雑多にある独特の色彩にあふれた映像に酔い痴れる思いに浸っていた時期でした。

 

サム・リーのすっきりとした顔立ちやまったくぜい肉のないひょろりとした痩身はそんな情報の多すぎる映像にくっきりと浮かび上がってくるようです。

ヒロイン・ペンも細い体にショート・ヘアが可愛い女の子でサム・リー=チャウと互いに好き合っていてしょっちゅう性的なことを言い合ってべたべたくっつきあっているのにキスもセックスもしない不思議な関係なのは今見ると余計に切なく愛しく思えます。

 

数年後日本映画『ピンポン』にサム・リーが出演した時は嬉しかったけどあの時どのくらいの日本人観客がサム・リーが出ている凄さに気づいてくれたかと悶々したりもしました。そんなことで悶々しても仕方ないんですけどね。

 

香港中国映画に夢中になったことで香港が大陸に返還されたことを特別に感じることができましたし、中国に関する話題に興味がありますし、広東語は無理ですが、中国語の勉強もかなりしました。

そして今香港が大陸との対立で困難な時期が長く続いています。

私は映画でしか知りませんが香港の魅力が無くなってしまうようなことは考えられません。国には様々な事情があり簡単に物事が解決するわけではないのでしょうけど、香港の若者たちがこの映画のように命を懸けて戦っているのはやはり辛いことです。

若者は世界を変えていく力がある。

香港を作り上げるのは誰なのでしょうか。