脚本/宮藤官九郎ですが、私はとにかく明治~昭和前期が舞台になるということで期待大でした。特に最近気になっている226事件が扱われているといいなというような関係ない部分に注目していたのですが、ドラマが始まってしまうと思った以上に面白く毎週楽しみにしていました。
とにかくまずは中村勘九郎演じる金栗四三さんの魅力がただ者ではなかったのでした。
阿部サダヲの田畑政治もよかったですが、金栗さんは金栗さんとしか思えなくはなかったですか?まるで金栗さんというかたがそこで動いて話されているかのような思いで観ていました。
まっすぐで真摯で一途でそんなキャラクターは最近あまりなかったせいもあるのかもしれません。若き頃金栗さんが三島弥彦とストックホルムオリンピックに挑む珍道中はいまではもう楽しかった思い出という感じです。
笑わせたり泣かせたり、日本国内の出来事や落語まで絡ませていく複雑な構成は私は大好きですがそれもまたドラマを判りにくくしていたのかもしれません。
結果視聴率は最悪だったようですが、原因がそれだけでなかったのは確かです。
現在の日本の状況を皮肉るような内容が度々あるのもまた低視聴率につながってしまったと言えます。
今の日本の風潮は不気味なほど自国を賛美しないことに「反日」というレッテルを貼って疎外するというものです。
特にそれが年齢が上がるほど顕著ということに結びついています。
が、そうした風潮に真正面で取り組んだのがこのドラマでした。
最後の回で
「これが、君が世界に見せたい日本かね」
この言葉は2020東京オリンピックに対して問われたのですね。
私たちはまあちゃんと同じように
「はい。いかがですか」
と問い返しきれるのでしょうか。
東京オリンピックまではもう1年を切ってしまいました。
私たちはまあちゃんのように最後まで頑張ってあがくことができるのでしょうか。
そしてこのドラマで驚いたのは人見絹枝さんやほかの女性アスリートたちの苦難でした。もちろん日本の男女性差の意識から感じてはいましたが映像として見てしまうとやはり辛く悲しいものです。
特に人見さんの壮絶な環境は打ちのめされる思いでした。
ドラマ『いだてん』は二人の男のドラマとして制作されていますが女性たちの活躍を大きく描いたことも賛辞したいと思います。
2019年は安倍政権の癒着が固まり剥がれないおぞましい一年でもありました。
メディア特にNHKが政権べったりと言われ、最も重苦しい時期でもありましたが『いだてん』の反逆性がせめてもの意地を見せてくれたかもしれません。
経済的にも人間の精神性もなにもかも泥沼に落ち込んでしまったかのように思える現在日本を立て直していくのは結局そこに住む人々でしかありえません。
金栗さんが日本中を走り抜いたという証をまあちゃんに見せる場面は泣けました。
「なんのために?」
そのことを私たちは考えなければなりません。