ガエル記

散策

『そして〈彼〉は〈彼女〉になった 安冨教授と困った仲間たち』細川貂々

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はい。安冨歩さんの「これまで」を知りたくてKindle版で購入読了しました。

もちろんこれまでもYouTubeなどでお話を聞いたりしてなんとなくのイメージを抱いてはいたのですが、この本を読んでみたらそうした想像とはかなり違っていたので驚きでした。やはり他の方の人生を勝手に想像して決めつけてはなりません。

しかし本書は実をいうと『そして〈彼〉は〈彼女〉になった 安冨教授と困った仲間たち』のその理由を明確には「分析」まではなくても「表現」もされていないように思えます。

たしかにタイトルは『そして〈彼〉は〈彼女〉になった 安冨教授と困った仲間たち』であって『なぜ〈彼〉は〈彼女〉になったか? 安冨教授と困った仲間たち』ではありません。

そこは重要な点だと思えます。

 

 

以下ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

と言っても他の本と違ってこれはやはり購入してもらいたい気持ちが強いですねw

『一月万冊』をずっと見ているせいで購買にも協力したい気持ちになってしまいます。

 

細川貂々さんの絵はあっさりとしかも綺麗に描かれていて簡単でありながら適切に心地よく表現されていると感じました。

特に出だしで貂々さんご自身が安冨先生を紹介される時の覗き見る姿勢でその力量が伝わりますw

そして覗き見た安冨先生が物凄くチャーミングに描かれていたので私まで「おおっ!!」となりました。

さらに驚いたのはその傍らに「お連れ合い」のふうちゃん先生がすでに登場されていて以後、お二人の物語が交互に進んでいくのですが分量としてはむしろ安冨先生よりもふうちゃん先生の方が多いことでした。

最初は(タイトルからして)えっという感じだったのですがそうした彼女の話が後半から安冨先生の話に絶妙に絡んでいくことになります。

ふうちゃんの話を読むことで安富先生の話もより理解できる構成になっているのですね。

 

さて私がこの本を読もうと思ったのは先日記事を書いた『誰が星の王子さまを殺したのか』を読んでいて安冨歩氏にとって「意地悪なバラ」は誰なのか?と気になって仕方なくなったからでした。

『誰が・・・』はあくまでも『星の王子さま』における「モラルハラスメント」を分析した本なのでご自分の話の詳細は語られていません。

そこでなんとなく勝手に想像を働かせるしかなかったわけですが安冨歩本のカテゴリに本書を見つけて(作者は違うわけですが)これを読まずには『誰が・・・』も理解できない、と思ったわけです。

なるほど安冨歩氏にとっての「バラ」が誰だったのか、は教えてもらえましたが、先にも書いた通り本書はむしろふうちゃんの物語に大きな比重があります。

それによって安冨氏の過去を(またもや)想像することはできるのですがふうちゃんのそれに比べると詳細が記されてはいないのが残念でした。

 

ここでまた最初に戻ります。

タイトルが『そして〈彼〉は〈彼女〉になった 安冨教授と困った仲間たち』であるのに何故安冨教授の過去はオブラートに包んだものになってしまったのでしょうか。

『なぜ・・・・?』ではないと言ってもその点は少し物足りない気もしました。

やはり安冨歩さんにとってその経過の詳細は簡単には言えないものなのかもしれません。

またたぶんその原因である方がご存命であり承諾もとりにくい、ということもあるのかもしれません。

しかし『誰が星の王子さまを殺したのか』にモラルハラスメントを分析した方なのでご自身の分析についても書かれて欲しい、と思いました。

 

とはいえ私はまだ安冨氏の本を少し読んだだけなので、もし既に別の著作で詳細に書かれておられるのなら申し訳ありません。

他の著作にもそうした記述があるように思えなかったからなのですが、あるのだったら是非読んでみたいです。

本書の最後は「ほかにもいろんな苦労はあったけど」という駆け足的にまとめられた部分もいつか安冨歩氏著作で読みたい、もしくは聞いてみたいと思います。

もう一つ気になるのはご自身のお子さんへの考えや教育ですね。

ご自身が気づかれたのがかなり後なので小さな子供時代はどうだったのか、気づかれた後はどうだったのでしょうか。

なんだか根掘り葉掘り、のようですがwあくまでも分析の著書として書かれてくださらないかと願ってしまいます。

 

そうしたことは安冨歩氏の問題なので、本書はとても面白い良い作品でした。