ガエル記

散策

『さらざんまい』幾原邦彦

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『さらざんまい』短すぎる。もう少し観ていたいよ。

絵の美しさはもとより音楽もセリフも楽しい、のにもかかわらずこの深味と切れ味の

鋭さは比類なき。

 

暴力の否定、を考え始めてから暴力の否定を軸にした作品を探し始めているのですが実際なかなかないのが現実です。

それほど暴力と言うのはやはり魅力的なのでしょう。

本作でも特にレオマブ関係のじれったさにBLでよくある暴力を期待してしまう向きもあるでしょうがやはり暴力ではつながれないのですよ。

 

初見ではまったく思いつかなかったのですが山田玲司氏の考察で本作が仏教である、という指摘に準じて見ていけばさらさらと謎が解けていくようです。

とはいえ仏教用語自体に馴染みがないのでそのつどネット検索が必要です。

例えば本作の最も大きなキーワードである「欲望」は一般的に「悪い言葉」として考えられがちですが本作では人間にとって必要なもの、として使われているとみるべきですね。

キャッチコピーがそもそも「欲望は君の命だ」ですし大切だからこそ「欲望搾取」されてしまうわけです。

「欲」のwikiを見ても

仏教などでいう「欲」は、概ね生理的(本能的)なレベルのものを指しており、精神にとってをよくしていくもの、愛情を育てるもの、抑制するべきものとして説かれている。

というわけで抑制せねばならないけれど人間が生きるために非常に大切なものとされているのです。

この欲望が抑圧され、または歪曲してしまっているのが現在の苦悩なのではないでしょうか。

 

気になるのはなぜ本作が極端に男性同士のつながりを描いているかということです。

もちろんその答えは幾原邦彦監督作品のひとつだから、なのかもしれません。

ウテナ』では男と女の関係が色濃く描かれて『ピンドラ』では家族の関係となり『ユリ熊』では少女たちであるなら『さらざんまい』が少年たちになるのは当然ではあります。

とはいえ男女を組み合わせた形では本作のテーマが描きにくい、のが日本の男女関係なのではないのだろうか、とも思ったりするわけです。

それではイクニの次の作品は困難な日本の男女関係でテーマを求めること、なのではないでしょうか。

 

と、先走ってしまいました。

『さらざんまい』最高のアニメです。