ガエル記

散策

『君、花海棠の紅にあらず』 恵楷棟 温徳光 その2

原題:鬓边不是海棠红、英題:Winter Begonia

 

 

黄暁明(ホアン・シャオミン)演じる程鳳台見惚れてしまうかっこよさです。

彼は西洋に留学していたこともあって京劇よりも西洋の映画のほうが良いという嗜好なのですがふとしたことで商細蕊と出会い彼を知るごとに惹かれていきます。

鳳台は資産家の息子だったとはいえ父親の死で財産を失ってから自身で富裕な生活を取り戻した屈強な男でもあります。彼の言動に見える冷徹な強行ぶりから単なる坊ちゃんではない芯を感じさせます。どことなくシャアを彷彿とさせます。

一方の細蕊は幼児期に劇団に入れられた(売り飛ばされた?)身の上で意地っ張りゆえに扱かれ優しくしてくれた姉弟子に強い愛情を持ちその姉弟子に導かれて女役を磨き上げてきたのですがその姉弟子への愛情が恋心ではないのに過剰な強さを持っていたことで周囲を困らせていきます。

恋心ではないのにも関わらず「姉弟子は最も大切なのは私だと言った」という思いが細蕊の心を歪ませてしまうのです。

その奇妙に強い細蕊の思いに鳳台は納得し惹かれていきます。

そして細蕊の思いに困っていた姉弟子夫妻を鳳台は説得するのでした。

 

つかみどころのない不思議な魅力を持つ細蕊にはまっていく鳳台は彼が演じる楊貴妃を観てさらに衝撃を受けてしまいます。

その美貌と仕草の華麗さだけではなく楊貴妃の心に痺れてしまうのです。

人生は思うようにはいかない。楊貴妃もまたそうであったが彼女は屈服するより死を選ぶ、その気高さに鳳台は細蕊を重ねて感じたのでした。

 

非常に難しい心の表現だと思いました。

この細蕊と鳳台の共鳴は誰もが共感できるものではないのかもしれません。

しかしだからこそ鳳台はまったく違う人生を歩んでいるはずの細蕊にこんな共鳴を感じたことに驚いたのではないでしょうか。

鳳台は精神世界で細蕊に触れてしまったのです。

 

これもニュータイプの思念を感じさせます。『機動戦士Ζガンダム』直後なので仕方ない共感です。