ガエル記

散策

『弟とアンドロイドと僕』阪本順治

本作の感想とか考察とかを書けるような能力はないので鑑賞だけで記録は止めておくかと思ったのですがとにかく鑑賞はしました。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

他の方のレビューを見ても「難解だ」「わからなかった」の言葉が並ぶのですが同時に幾つかの「でも好き」という感想もあってまさに私もそういう感じでした。

手放しの「まったく好き」ではないけれどこの世界観は心地よくもあります。

前回の『 ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』でのレビュー中で

永遠に「最高に心地よい映画」を探し続けるのが一番良いのかもしれない。

と書いたのですが本作は心地よい映画を探す中で確実に手に取って観た一つだと言えます。

最初から最後まで降り続ける雨。

古い大きな洋館にひとり棲む男。

しかしその暖炉には赤々と火がくべられていてむしろ居心地が良い。

その洋館はかつて病院だった。男の父親は医者だったが今は寝たきりの病人となって死期が近い。

その父親は男の母と別れ新しい家族を作っていた。

男は声変わりする前に父と生き別れたのだ。

そして今腹違いの弟が男の棲む洋館を売って金にしろと無心にくる。

そんななか男は密かにアンドロイドを作っている。

それは男の自分自身を写したアンドロイドなのだ。

 

映画中で父親に「これはお前の頭の中の世界か」とはっきり言わしめているのですからこれは主人公の頭の中の世界なのです。

 

男は孤独ですがもうひとりの自分を作って幸福な笑みを浮かべる。

 

だけど男はもがき苦しみ続ける。

 

私はただ暖炉のある古い洋館に住みたいだけなのです。

 

孤独の幸せ。

そして人間ではなくアンドロイドとなってやっと少女を抱くことができる。